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業務システムは何年で作り直すのか|入れ替え時期の判断基準

「このシステムはもう10年使っているから、そろそろ作り直しでは」と言われることがあります。けれども年数だけでは、入れ替えが必要かどうかは決まりません。

10年動いていて誰も困っていないシステムもあります。逆に、3年でもう手が出せなくなっているシステムもあります。差が出るのは使った年数ではなく、別のところです。

この記事では、入れ替えの引き金になるもの、年数が目安にならない理由、直す・足す・作り直すの選び分け、そして自社で判断するための進め方を整理します。

目次(8項目)を開く
  1. 「何年もったか」ではなく「何が動いたか」で決まる
  2. 入れ替えの引き金になるのは、だいたいこの5つ
  3. 年数の目安が当てにならない理由
  4. まだ使えるのに作り直しを勧められたときの見分け方
  5. 直す・足す・作り直す・そのまま使うの4つ
  6. 入れ替え時期を自社で判断する5ステップ
  7. pegのやり方
  8. よくあるご質問

「何年もったか」ではなく「何が動いたか」で決まる

業務システムは、机や機械と違って、使っているだけでは減りません。昨日動いていたプログラムは、今日も同じように動きます。それなのに「使えなくなる」のは、システムそのものが古びたからではなく、周りが動いたからです。

周りというのは、たとえばこういうものです。

  • OS・ブラウザ・データベースなど、土台になっているソフトのサポート期限
  • 制度や法令、団体の規程
  • 業務量や会員数、利用する人数
  • そのシステムを直せる人がいるかどうか
  • つながっている外部サービス(決済・メール・地図・認証など)の仕様

このどれかが動いたときに、システムは「もう続けられない」状態になります。つまり入れ替えの判断は、システムの年齢を数えることではなく、外側で何が動いたかを確かめることです。

会計の償却年数と、システムの寿命は別のものです

「ソフトウェアは5年で償却するから5年で入れ替え」という話になることがあります。償却年数は税務・会計上の取り扱いで、システムが使えるかどうかとは関係がありません。償却が終わっても問題なく使えますし、償却の途中でもサポート終了で使えなくなることがあります。入れ替えの判断材料には、償却年数ではなく下の5つを使ってください。

木の机の上のノートパソコンとメモ

入れ替えの引き金になるのは、だいたいこの5つ

これまでご相談をいただいた中で、入れ替えのきっかけになっていたのは次の5つでした。

引き金何が起きるか気づくきっかけ
OS・ソフトのサポート終了セキュリティ更新が止まる。画面は動いていても使い続けられない情報システム担当や取引先からの通知
制度・規程の変更判定の条件や帳票の様式が、今のシステムでは出せなくなる所管官庁からの通知、総会での規程改定
業務量・会員数の増加処理が遅い、同時に使えない、結局Excelに落として手作業が増える担当者の残業、締め切り前の作業の集中
直せる人がいなくなった直したいのに触れない。改修の見積もりそのものが出てこない担当者の退職、開発会社の廃業や連絡不通
外部サービスの仕様変更つないでいた決済・メール・認証などが止まる、または止まる予告が来るサービス提供元からの告知メール

この5つは、性質が二つに分かれます。サポート終了・制度変更・外部サービスの仕様変更は、外から期限がやってきます。日付が決まっているので、先送りができません。一方、業務量の増加と「直せる人がいない」は期限がありません。困っているのに期限がないので、何年も先送りになりやすいところです。

サポート終了の対処は OS・ソフトのサポート終了で業務システムを更新するときの進め方 と Windowsのアップデートに業務システムが対応していないときの対処法 に、制度変更で直す場所が出てくる話は 理事会・総会の資料づくりを軽くする方法 に、直せる相手がいなくなったときの手順は 開発会社と連絡が取れなくなったときの対処法 にまとめています。

年数の目安が当てにならない理由

同じ5年使ったシステムでも、次に手を入れられるかどうかは大きく変わります。差が出るのは、作ったときの中身です。

  • 使っている技術が、今も広く使われているものか。それとも、その会社だけの独自の作りか
  • 設計資料と仕様の記録が残っているか。残っていても、その後の改修が反映されているか
  • ソースコードと管理者権限が自社の手元にあるか

広く使われている技術で作られていて、資料と権限がそろっているシステムは、10年たっても部分的な改修で続けられることがあります。逆に、独自の作りで資料がないシステムは、3年でも誰も手を出せなくなります。年数ではなく、この状態を見てください。

自社のシステムについて、次の5つを確かめると、入れ替えが近いかどうかが見えてきます。

  1. 土台のソフト(OS・データベース・ブラウザ)のサポートが、いつまで続くか
  2. 設計資料と仕様の記録が残っているか。改修の履歴が追えるか
  3. ソースコードと管理者権限が自社にあるか
  4. 改修を頼める相手がいるか。頼んだら見積もりが出てくるか
  5. 今の業務と画面が、どのくらいずれているか(画面にない作業をExcelや紙で補っていないか)

3番が「ない」の場合は、入れ替えの前に受け取るものの整理が必要です。引き継ぎチェックリスト(25項目) に、何を受け取るべきかをまとめています。4番が「いない」の場合は、保守の体制から決め直すことになります(業務システムの保守・運用は誰がやるのか)。

まだ使えるのに作り直しを勧められたときの見分け方

「古いので全部作り直しましょう」という提案を受けることがあります。これが妥当かどうかは、理由が外側の条件に結びついているかで見分けられます。次の3つを聞いてみてください。

  • どの機能が、なぜ今のままでは続けられないのか(サポート期限なのか、制度なのか、処理の限界なのか)
  • 直す・足すでは済まない理由は何か
  • 作り直した後、同じことは何年後に起きるのか。そのとき何をすればよいのか

3つとも具体的に返ってくるなら、根拠のある提案です。「古いから」「サポートされていない技術だから」だけで、どの機能がどう困るのかが出てこないときは、範囲をしぼれる余地が残っています。

日本眼科医会の会員管理システムでは、大手ベンダーから前のシステムと同じ規模の刷新提案が出ていました。pegは機能一覧の比較から入らず、事務局の業務のヒアリングから始めて、今の業務で必要な範囲を先に決めました。そのうえで試作画面(モック)で仕様を固め、バックエンドに着手する前に仕様を確定させています。期間は、他社の見積もりが実装9か月+テスト3か月だったのに対し、実装5か月+テスト2か月の7か月でした(導入事例/進め方の詳細)。

範囲をしぼるほど、発注側で決めることが増えます

全部作り直す提案は、見積もりを作る側からすると、もっとも作りやすい形です。範囲をしぼると「どこを残してどこを作るか」の判断が必要になり、その判断には業務を知っている人しか答えられない部分があります。どこまで整理してから作り始めるかは システムを作る前に業務をどこまで整理するか に、費用の決まり方は 業務システムの開発費用はいくらかかるのか にまとめています。

直す・足す・作り直す・そのまま使うの4つ

入れ替えか現状維持かの二択ではありません。実際には4つの選択肢があり、機能ごとに別の答えになることもあります。

選択肢向いている状況気をつけること
そのまま使う期限のある引き金が来ていない。困っている業務も特定できていない「何もしない」を選んだことを記録し、サポート期限だけは毎年確認する
直す(部分改修)困っているのが1〜2か所。土台のソフトのサポートが続いている改修が積み重なると全体が追えなくなる。改修の内容と理由を残しておく
足す(外付け)本体に手を入れられないが、足りない機能がある本体と外付けで同じデータを二重に持たない。どちらが正かを決める
作り直すサポート終了や制度変更で続けられない。直せる相手がいない移行するデータの整理に時間がかかる。開発の期間とは別に見ておく

「そのまま使う」を選択肢に入れておくことが大事だと考えています。方針を決めないまま時間が過ぎるのと、期限を確認したうえで今年は動かないと決めるのは、別のことです。後者なら、来年また同じ材料で判断できます。

作り直しを選んだときにいちばん時間を取られるのは、開発ではなくデータの整理です。表記のゆれ、重複、退会者や退職者の扱い、過去年度をどこまで持っていくか。どれも正解を知っているのは発注側です(業務システムの入れ替えでデータ移行が詰まる5つのこと)。古いシステムからの置き換えで費用を抑える進め方は 老朽化した業務システムの置き換え費用を抑える進め方 にまとめています。

入れ替え時期を自社で判断する5ステップ

開発会社に相談する前に、自社だけで進められるところまで整理しておくと、相談が短く済みます。

  1. いま動いている土台を一覧にする。OS、データベース、ブラウザ、つないでいる外部サービス、業務で使っているソフト
  2. その一覧に、サポート期限の日付を入れる。日付が調べられないものは「不明」と書く。期限がないものは「期限なし」と書く
  3. 「期限なし」の中から、実際に困っている業務を具体的に書き出す。誰が、月に何時間、どの作業に使っているかまで書く
  4. 機能ごとに、直す・足す・作り直す・そのまま使うのどれで解けそうかを仮に当てる。この時点では仮でかまわない
  5. いちばん早い期限から逆算して、着手する時期を決める。データ整理の期間を、開発の期間とは別に足しておく

期限の半年前なら、選択肢が残っています

期限の半年前に相談を始めると、直す・足す・作り直すのどれも選べます。期限の1〜2か月前になると、間に合う方法しか選べなくなり、結果として作り直し一択になることが多いです。3のところまで書けたら、その内容をそのまま持ってきていただければ相談できます。ヒアリングシート(7項目) と RFPテンプレート も、埋めるだけで整理が進む形にしてあります。方針から迷っているときは 3つの質問でわかる簡易診断 をお使いください。

pegのやり方

pegは、年数を理由に入れ替えをお勧めすることはしません。確かめるのは外側の条件です。

  • 期限のある引き金から順に決めます。 土台のソフトのサポート期限、制度の改定予定、つないでいる外部サービスの告知を一覧にして、日付が決まっているものから着手の時期を逆算します
  • 機能一覧の比較から入りません。 まず業務のヒアリングから始めます。日本眼科医会では、事務局の業務を伺うところから始めて、必要な範囲を先に決めました
  • 試作画面(モック)で仕様を固めてから、バックエンドに入ります。 入れ替え後の画面を先に見ていただけるので、今の業務がどう変わるかを作る前に確認できます
  • 制度で決まっている判定は、システム側に入れておきます。 ドローン操縦士協会では、実技10時間未満は修了不可、要件を満たさない講師は記録できない、という判定を画面に組み込みました。こうしておくと、制度が変わったときに直す場所が決まります(導入事例)
  • 次の入れ替えのときに、他社でも引き継げる形にします。 プログラム・設計資料・管理者権限は納品物として契約に明記します。全案件を必ず2名以上で担当し、引き継ぎ資料は常に最新にしています
  • データの整理・突き合わせは、発注側に担っていただくことがあります。 誰がどこまでやるかを着手前に決めます
  • 確立された技術と標準の型で作ります。 未知の技術は受託しません。次に手を入れる人が困らないことを優先しています

「まだ入れ替えなくてよいのではないか」という結論になることもあります。そのときはそうお伝えします。

よくあるご質問

業務システムの寿命は何年くらいですか。

決まった年数はありません。入れ替えが必要になるのは、土台のソフトのサポート終了、制度の変更、業務量の増加、直せる人がいなくなったこと、外部サービスの仕様変更のいずれかが起きたときです。会計上の償却年数とシステムが使えるかどうかは別のものなので、償却年数を目安にしないでください。

サポート終了の通知が来ました。いつまでに決めればよいですか。

期限の半年前には方針を決めておくと、直す・足す・作り直すのどれも選べます。移行するデータの整理に思ったより時間がかかるためです。期限が迫っている場合の選択肢は Windowsのアップデートに業務システムが対応していないときの対処法 にまとめています。

開発会社から「古いので作り直し」と言われました。どう判断すればよいですか。

3つ聞いてみてください。どの機能がなぜ今のままでは続けられないのか、直す・足すでは済まない理由は何か、作り直した後は同じことが何年後に起きるのか。3つとも具体的に返ってくるなら根拠のある提案です。返ってこないときは、範囲をしぼれる余地が残っています。

今のシステムがどう作られているか社内で分かりません。調べてもらえますか。

動いている画面と、残っている資料・データの中身から、分かる範囲で整理します。設計資料がまったく残っていなくても、画面を見ながら業務を伺うところから始められます。仕様書がない状態からの進め方は 要件定義を発注側だけで抱えない進め方 にまとめています。

作り直すとき、今のデータは全部持っていけますか。

全部持っていくかどうかを決めることから始めます。退会者・退職者のデータ、過去年度の記録、添付ファイルは、それぞれ別の判断が必要です。全部持っていくと移行の作業量が増え、絞りすぎると後から確認できなくなります。判断の材料は 業務システムの入れ替えでデータ移行が詰まる5つのこと にまとめています。

まずは話すところから

入れ替えるべきか、まだ使えるのか。その判断からご相談いただけます。土台のソフトの一覧がなくても、今困っていることを伺うところから始められます。費用や期間の目安だけ知りたい、という段階でもかまいません。