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業務システムの保守・運用は誰がやるのか|納品後に止まらない体制の決め方

システムを作るときの打ち合わせは、どうしても「何を作るか」の話で埋まります。動き出したあとのことは、たいてい最後に少し話して終わりになります。

ところが、困るのは動き出したあとです。止まったときに誰へ連絡するのか、OSが変わったときに誰が直すのか、制度が変わって判定の条件が変わったときに誰が手を入れるのか。ここが決まっていないと、動いているのに誰も触れないシステムになります。

この記事では、「保守」と呼ばれているものの中身を分けたうえで、発注側でできることはどこまでか、契約の前に決めておく6項目を整理します。株式会社pegが実際に担当している案件での進め方も書きました。

納品のあと、誰が何をするのかが決まっていない

保守の相談でよく伺うのは、次のような状態です。どれも、作るときに決めておけば避けられたものです。

  • 画面が開かなくなったとき、誰に連絡すればいいのか分からない。前の担当者の携帯番号しか残っていない
  • サーバーのソフトを更新したら動かなくなった。更新してよかったのかどうかも分からない
  • 制度が変わって判定の条件を直したいが、どこに書かれているのか誰も知らない
  • 管理者のパスワードが、辞めた職員の手帳にしか書かれていなかった

このうち3つは、技術の問題ではありません。「誰が」「どこを見て」「何をするか」が決まっていないという、段取りの問題です。

机でノートパソコンに入力している様子

「保守」と呼ばれているものは4種類ある

見積書に「保守」と一行だけ書かれていることがあります。中身は、性質のまったく違う4つが混ざっています。

種類中身いつ起きるか
① 不具合の修理作ったときの間違いを直す。想定どおりに動いていない状態を、想定どおりにする動き出してすぐの時期に集中する
② 環境への追従OS・ブラウザ・サーバーのソフトが新しくなったことへの手当て。システム自体は変えない数年ごとに必ず来る
③ 制度・業務の変更対応法令の改定、区分の新設、様式の変更に合わせて作り変える制度側の都合で、いつでも
④ 運用の代行・問い合わせ対応使い方の質問に答える、データを直す、月次の締め作業を代わりに行う毎月・毎年

①は、本来は作った側の責任の範囲です。②〜④は、新しく手を動かす作業です。この2つを「保守」の一語にまとめて月額にしてしまうと、何にお金を払っているのか分からなくなります。

見積りを受け取ったら、「保守」の中身がこの4つのどれなのか、分けて書いてもらってください。分けて書ければ、他社の見積りとも比べられます。見積書の読み方はシステム開発の見積もりの読み方に整理しています。

発注側でできること、開発会社でないとできないこと

日々の運用のうち、どこまでを自分たちでできるかは、作るときにほぼ決まります。あとから増やすのは、作り直しに近い作業になります。

やりたいこと発注側でできるか分かれ目
利用者(職員・会員)の追加・削除できるようにしておくべき管理者用の画面を作ってもらっているか
区分・講座名・料金区分などの追加設計によって分かれる画面から追加できる形か、プログラムに書き込まれているか
画面に出る文言の変更設計によって分かれる同じく、画面から変えられる形になっているか
データの一括修正開発会社に頼む取り返しがつかない操作なので、発注側には開けないほうが安全
帳票・証明書の様式変更開発会社に頼むレイアウトはプログラム側で持っていることが多い
バックアップが取れているかの確認できるようにしておくべき管理画面か、定期の報告で見られる状態にしておく

発注のときに伝えてほしいのは、「運用で変わるもの」の一覧です。会員の区分、講座の名前、会費の種別、お知らせの文面——毎年のように変わるものを先に挙げておけば、そこを画面から変えられる形にしてもらえます。逆に、それを言わないまま作ると、ひとつ名前を増やすだけで依頼と見積りが必要になります。

相談の前に自社で埋めておく項目はシステム開発のヒアリングシートにまとめています。

制度が変わると、必ず直す場所がある

資格や講習を扱うシステムには、制度の条件そのものが入っています。pegが担当したドローン操縦士協会の講習管理では、こうした判定が動いています。

  • 実技の時間が10時間に満たない受講者は、修了にできない
  • 要件を満たしていない講師の記録は、登録できない
  • 修了の要件を満たしているかどうかを、一覧で表示する

この「10時間」や「講師の要件」は、制度の側が決めています。制度が変われば、システムの判定も変えなければなりません。つまり、この種類のシステムには、いつか必ず手を入れる場所があらかじめ含まれているということです。

だからこそ、条件がどこに書かれているかが分かる状態になっているかが重要になります。pegでは全ての案件を必ず2名以上で担当し、引き継ぎ資料を常に最新の状態にしています。担当者ひとりの記憶の中にしかない、という状態を作らないためです。

協会・医会の会員管理でも同じで、会員の区分や会費の種別は制度や総会の決定で変わります。会員管理システムを作り直した例は日本眼科医会の事例に書いています。

契約の前に決めておく6項目

保守の契約書を作る前に、次の6つを文章にしておいてください。順番にも意味があります。1〜3は、保守契約を結ぶかどうかに関係なく必要なものです。

  1. 不具合を無償で直す範囲と期間:いつまで、何を無償で直すのか。pegは、納品後3か月の無償での不具合対応を契約に書いています
  2. 連絡の窓口と、返事の目安:誰に、どの手段で連絡するか。担当者ひとりの個人携帯だけ、という状態にしない
  3. 納品物の範囲:プログラム・設計資料・管理者権限。この3つが揃っていないと、他社に引き継げません。pegはこれを納品物として契約に明記しています
  4. 環境の更新が来たときの扱い:OSやサーバーのソフトが新しくなったとき、保守の範囲で見るのか、その都度の作業として見積もるのか
  5. 機能の追加・変更の頼み方:その都度見積もるのか、月あたりの作業枠を決めて持つのか。制度変更の多い業務なら、枠を持っておくほうが動きやすい
  6. 契約が終わるときの引き渡し:データをどの形式で受け取るか(CSVなど、実際に開ける形で)。アカウントの移管も含めて先に決めておく

受け取るものの具体的な一覧はシステムの引き継ぎチェックリスト(25項目)にあります。最低限そろえておきたいものには印を付けています。

頼める相手がいなくなる3つの場面

保守を頼める相手がいなくなるのは、だいたい次の3つです。

  • 担当していた人がひとりだけで、その人が会社を離れた。社内に引き継ぎ資料がなく、残った人には分からない
  • 会社そのものと連絡が取れなくなった。対処の手順は開発会社と連絡が取れなくなったときの対処法に書いています
  • 作り方が特殊で、他社が引き受けられない。珍しい言語や仕組み、作った本人しか分からない構造になっている

3つ目は、動き出したあとでは手の打ちようがありません。作るときにしか防げない種類の問題です。

pegは、まだ確立されていない技術を使う案件はお受けしていません。確立された技術と、標準的な作り方の型をそのまま使います。新しさを売りにしないかわりに、他社でも引き継げる形になります。大手のシステム会社との違いは大手のシステム会社と小さな会社は何が違うのかに整理しました。

pegのやり方

pegは、作ったあとに困らないことを、作る前の段取りで決めています。

  • 全ての案件を必ず2名以上で担当し、引き継ぎ資料を常に最新にしておく
  • プログラム・設計資料・管理者権限を、納品物として契約に明記する
  • 納品後3か月の無償での不具合対応を、契約に明記する
  • 支払いは段階払い(着手・画面確定・納品)にする
  • 確立された技術と標準的な型で作る。他社でも引き継げる形を優先する
  • 最初のヒアリングでは、ふだんの業務の言葉で伺います。とくに例外の処理——普段と違うときにどうしているか——を丁寧に洗い出します

保守の話は、相談のときから一緒に決められます。ご相談は無料です。

関連:ドローン操縦士協会の事例/業務システムの開発費用はいくらかかるのか/3つの質問でわかる簡易診断

よくあるご質問

保守契約は必ず結ばないといけませんか?

必須ではありません。ただし、不具合のときの連絡先と、納品物(プログラム・設計資料・管理者権限)を受け取っているかは、契約の形に関係なく確認してください。この2つがあれば、保守契約がなくても、必要になったときに他社へ頼めます。逆に、保守契約があっても納品物を受け取っていない場合は、その会社から離れられません。

保守の費用はどう決まるのですか?

中身によって決まり方が違います。作ったときの不具合の修理は、本来は作った側の責任の範囲です。環境の更新への追従や、制度変更に合わせた作り変えは、手を動かす作業量で決まります。「保守」の一語でまとめず、何が含まれるのかを分けて書いてもらうと、比べられるようになります。費用の決まり方は業務システムの開発費用はいくらかかるのかに書いています。

社内にエンジニアがいませんが、運用できますか?

運用でよく変わるもの——利用者、区分、講座名、画面の文言——を画面から変えられるようにしておけば、日々の運用は事務局だけで回せます。逆に、それがプログラムに書き込まれていると、名前をひとつ増やすだけでも依頼が必要になります。発注のときに「運用で変わるもの」を挙げて伝えるのが、いちばん確実です。

今の開発会社に保守を断られました。どうすればいいですか?

まず、納品物(プログラム・設計資料・管理者権限・データ)が揃っているかを確認してください。受け取るものの一覧はシステムの引き継ぎチェックリストにあります。揃っていれば、他社に引き継ぐ相談ができます。連絡そのものが取れない場合の手順は開発会社と連絡が取れなくなったときの対処法に書きました。

pegは、他社が作ったシステムの保守も受けられますか?

中身を見てから判断します。一般的な技術で作られていて、プログラムと設計資料が揃っていれば、お引き受けできる見込みがあります。作った人しか分からない構造になっている場合や、確立されていない技術が使われている場合は、お断りすることがあります。できないことを引き受けるほうが、結果として迷惑をかけるためです。まずは現状をお聞かせください。

まずは話すところから

仕様書がなくても、社内にエンジニアがいなくても大丈夫です。実現したいことを伺い、進め方と概算をご提案します。ご相談は無料です。