協会・団体の理事会・総会の資料づくりを軽くする方法|毎回数えなおさない仕組み
理事会や総会が近づくと、事務局の予定が資料づくりで埋まります。会員数、会費の入金状況、講習の実施件数、資格の有効者数。どれも日々の業務で扱っている数字なのに、資料にするときはあらためて数えなおしている、という事務局は少なくありません。
この「数えなおし」は、担当者の段取りが悪いから起きているわけではありません。記録のしかたと、資料で求められる数え方がずれているときに必ず起きます。ずれたままシステムを入れても、数えなおしはなくなりません。
このページでは、理事会・総会の資料づくりのどこがシステム側に移せて、どこは移せないのかを、協会・団体の案件で実際に線を引いてきた形で整理します。費用の考え方は 業務システムの開発費用はいくらかかるのか にまとめています。
時間が消えているのは「作る」ではなく「数えなおす」
資料づくりの作業を分けてみると、三つに分かれます。数字を集めること、数字を確かめること、文章と体裁を整えることです。
このうち文章と体裁は、前回の様式が残っているのでそれほど時間はかかりません。重いのは前の二つです。会員名簿のExcel、会費の入金を記録した別のExcel、講習の受講記録、入会・退会の届出のファイル。置き場所が分かれているので、まず集めるところで時間がかかります。
そして集めたあとに、もっと時間がかかることがあります。数が合わないときです。名簿の会員数と、会費を納めた人数と、資格の有効者数が、それぞれ別の数になる。どれが正しいのかを確かめるために、一件ずつ突き合わせることになります。
理事会に出す資料で間違えられないのはこの部分なので、確かめる作業を省くことはできません。軽くするなら、確かめなくても合っている状態を先に作るしかありません。

毎回数えなおしているのは、だいたいこの5つ
協会・団体の事務局で、会議のたびに数えなおしになりやすいのはこの5つです。どれも「数え方が一つに決まっていない」という共通点があります。
| 数えなおしているもの | なぜ合わなくなるか | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 会員数 | 入会の届出日・承認日・会費の入金日のどれを起点にするかが決まっていない。退会・除籍・休会の扱いも年度によってぶれる | 会員数の基準日と、休会・未納をどちらに数えるか |
| 会費の入金状況 | 入金の記録が通帳や会計側にあり、名簿と結びついていない。年度をまたいだ入金や一部入金の扱いが人によって違う | 一件の入金をどの会員・どの年度に当てるかの決め方 |
| 講習・研修の実施件数と受講者数 | 申込・受講・修了が別に数えられていない。欠席や途中離脱の扱いが会場ごとに違う | 件数として数えるのは申込か受講か修了か |
| 資格・認定の有効者数 | 更新手続きの進行中の人を有効に数えるかどうかが決まっていない。失効の判定が手作業 | 有効・更新中・失効の境目と、判定する日 |
| 委任状・書面表決の数 | 届いた順に紙で積まれ、締切後にまとめて数える。重複や記入漏れが数えたあとに見つかる | 受け取った時点で有効・無効を判定する手順 |
右端の「決めておくこと」は、どれもシステムの話ではありません。団体の中で決めることです。ここが決まっていないままシステムを作ると、集計の画面はできても、出てきた数字をまた確かめることになります。
数えなおしが起きる理由は、記録のときに判定していないから
数えなおしの正体は、判定の先送りです。記録するときには「届出が来た」「入金があった」という事実だけを書いておき、それが会員数に入るのか、有効者に入るのかという判定を、資料を作るときにまとめて行っている。だから毎回やり直しになります。
この順番を入れ替えると、資料づくりは軽くなります。記録した時点で判定まで済ませておけば、一覧をそのまま数えるだけで資料の数字になります。
pegがドローン操縦士協会で作った講習・実技の管理では、この形をとりました。受講記録を入れた時点で修了要件を満たしているかを判定し、実技が10時間に足りていなければ修了にできない、要件を満たしていない講師の実技は記録として受け付けない、という判定を記録の側に持たせています。修了要件を満たしているかどうかは一覧で見られるので、報告のために後から数えなおす作業が発生しません。
判定を記録の側に移すと、入力する人の手間は少し増えます。その場で足りない項目を埋めないと先に進めないからです。そのかわり、会議の前に事務局が一件ずつ確かめる作業がなくなります。どちらが楽かは、入力する回数と資料を作る回数の比で決まります。年に数回の会議のために毎日の入力を重くするのは、たいてい得になりません。逆に、判定の材料が一つか二つ足りないだけなら、入力側で埋めてしまったほうが軽くなります。
システム側に移せるもの・移せないもの
資料づくりのうち、システムに任せられるのは「決まっている数え方で数える」ところまでです。何をどう数えるかを決めるところと、数字に説明をつけるところは残ります。
| 作業 | 移せるか | 補足 |
|---|---|---|
| 基準日時点の会員数・有効者数を出す | 移せる | 基準日と数え方が決まっていることが前提 |
| 会費の未納者一覧を出す | 移せる | 入金の記録が会員と結びついていれば、締日で切るだけ |
| 講習の実施件数・受講者数の集計 | 移せる | 申込・受講・修了を別に記録しておく必要がある |
| 前年度との増減と、増減の内訳 | 移せる | 入会・退会・除籍の理由を記録しておくと内訳まで出る |
| 委任状・書面表決の受付と集計 | 一部移せる | 受付と有効判定は移せる。何を有効とするかは定款・規程の話 |
| 数え方そのものを決める | 移せない | 団体の決め事。ここが決まらないと集計機能は作れない |
| 数字が動いた理由の説明文 | 移せない | 事務局が書く部分。ただし材料は一覧から取れる |
| 議案の文章・体裁 | 移さなくてよい | 前回の様式を使うほうが速い。無理にシステムに入れると窮屈になる |
移せない3行をシステムに押し込もうとすると、作る範囲が急に広がります。議案書の文章まで画面で作れるようにする、という要望はよく出ますが、年に数回しか使わない画面を作るより、必要な数字を表で出してWordやExcelに貼れるようにしておくほうが、事務局の手数は少なくなります。
「帳票を出す機能」から作ると、かえって重くなる
資料づくりが大変だという相談から入ると、最初に出てくる要望は「理事会資料をボタン一つで出したい」です。この要望からそのまま作り始めると、うまくいかないことが多いです。
- 現在の資料の様式を見せてもらい、同じ見た目の帳票を作る
- 出力してみると、数字が今の資料と合わない
- 合わない原因は、記録側で判定していなかった項目にある
- 帳票側に例外の条件を足して合わせにいく
- 翌年、区分や様式が少し変わって、また合わなくなる
帳票は、記録の状態をそのまま映すものです。記録側の数え方が決まっていないと、帳票の中に条件分岐を積むことになり、変更のたびに触る場所が増えます。
先に手を入れるのは記録側です。会員の状態、入金の記録、受講の記録に、判定に必要な項目をそろえる。そこが整えば、帳票は「並べて数えるだけ」の簡単なものになります。この順番の考え方は システムを作る前に業務をどこまで整理するか と 業務システムの入れ替えでデータ移行が詰まる5つのこと でも扱っています。
資料づくりを軽くする進め方5ステップ
システムを入れる前でも、最初の二つは事務局だけで進められます。ここが終わっていると、相談も開発も速くなります。
- 直近の会議資料を1部ずつ集める。 理事会・総会・部会の資料を、様式ごとに1部ずつ手元に置きます。これが「出さなければならない数字」の一覧になります。
- 数字ごとに、どこから取ったかを書き足す。 名簿のExcel、通帳、受講記録、紙の届出。どれを見て作ったかを数字の横に書きます。ここで同じ数字を複数の場所から取っていることが見つかります。
- 数え方を一つに決める。 基準日はいつか、休会と未納はどちらに数えるか、修了と受講のどちらを件数にするか。決裁が要るものは、決裁が下りるまで今の数え方のまま進めます。
- 記録側に判定の項目を足す。 決めた数え方で判定するために足りない項目を、記録のときに埋める形にします。ここがシステムの作業範囲になります。
- 一覧と書き出しの形を決める。 画面で一覧を見られるようにし、ExcelやCSVに書き出せるようにします。議案書の文章は今の様式のまま、数字だけ貼り替える形が手数が少なくなります。
1と2は、ヒアリングシート の項目とほぼ同じことをしています。相談前に埋めておくと、そのまま打ち合わせの材料になります。
pegのやり方
協会・団体の事務局の仕事は、団体ごとに違います。定款も規程も違い、年間の会議の回し方も違います。pegは、そこを一般論で片づけずに伺うところから始めます。
- いまの資料から入ります。 機能の話より先に、直近の会議資料を見せていただきます。どの数字をどこから取っているかを一緒にたどると、数えなおしが起きている場所がそのまま出てきます。仕様書は要りません。
- 業務のヒアリングから始めます。 日本眼科医会の会員管理システムを作り直したときも、機能の一覧から入らず、事務局の業務を伺うところから始めました。導入事例 に進め方を載せています。
- 試作画面で先に確かめます。 バックエンドの実装に入る前に、一覧と集計の画面を作ってお見せします。「この並びなら資料にそのまま使える」かどうかは、画面を見ないと判断できません。仕様はここで固めます。
- 判定は記録の側に置きます。 ドローン操縦士協会の講習管理と同じ考え方で、後から数えなおさなくてよい形にします(導入事例)。
- 名簿の整理は分担します。 表記の統一や重複の突き合わせは、会員を知っている方が手を動かしたほうが速く正確です。pegは何をどう揃えるかの決め方をお渡しして、作業そのものは事務局に担っていただくことがあります。そのぶん開発の作業量が減ります。
- 決めごとは資料に残します。 基準日や判定条件は設計資料として納品物に含めます。プログラム・設計資料・管理者権限を納品することは契約に明記しています。担当は常に2名以上で、引き継ぎ資料を最新に保っています。
会費請求と入金管理の話は 協会・団体の会費請求と入金管理をシステムにする方法、名簿そのものの作り直しは オリジナルの名簿管理システムを刷新するときの進め方、講習の受講管理は 講習・研修の受講管理をExcelから移行するタイミングと手順 にまとめています。協会・団体向けの進め方は 協会・医会の方へ にもあります。
どこから手をつけるか迷っている段階なら、3つの質問でわかる簡易診断 をお使いください。発注の条件まで整えたい場合は RFPテンプレート があります。紙の届出をWebに移す話は 紙とハンコで回している申請業務をWebにする前に決める5つのこと、申込から修了証までのオンライン化は 講習の申込から修了証の発行までをオンライン化する手順 にあります。
よくあるご質問
会員数の数え方が年度によってぶれています。先に直すべきですか。
先に決めていただくと、その後の作業がはっきり軽くなります。ただし決裁が必要なら、決まるまで待つ必要はありません。今の数え方で作り、基準日や判定の条件を設定で変えられる形にしておけば、決まったあとに作り直さずに済みます。
理事会資料の様式がそのまま出てくる機能は作れますか。
作れますが、先に作ることはおすすめしていません。記録側の数え方が決まる前に帳票を作ると、合わない数字を帳票側の条件で合わせにいくことになり、様式が変わるたびに直す場所が増えます。まず一覧とCSVの書き出しまで作り、様式が安定してから帳票にする進め方が長持ちします。
会計ソフトは今のまま使いたいのですが、会費の入金状況は出せますか。
出せます。会計ソフトを置き換えるのではなく、どの入金がどの会員のどの年度分かという対応だけを持つ形にします。会計側は会計のまま、名簿側は入金済みかどうかが分かる状態になります。対応づけの手順は団体ごとに違うので、現在の入金処理を伺ってから決めます。
委任状や書面表決の集計までシステムに入れられますか。
受け付けた記録と集計は入れられます。ただし何を有効とするかは定款や規程で決まっていることなので、そこは団体側で確認していただく部分です。pegは法律事務所ではありません。判定の条件を伺って、そのとおりに動く形にするところを担います。
事務局が少人数で、相談の時間もあまり取れません。
最初の打ち合わせは、直近の会議資料を1部お手元に置いていただければ始められます。資料づくりで時間がかかっている場所は、資料そのものを見ながら伺うのが一番早いです。事前の整理や資料作成は不要です。
まずは話すところから
資料づくりのどこが重いかは、団体の決め事と記録のしかたで変わります。直近の理事会・総会の資料をお手元に置いて、今どうやって作っているかをお聞かせいただければ、数えなおしが起きている場所と、記録側に移せる判定をその場でお伝えします。仕様書は要りません。
