トップ / コラム / 会員向けマイページ

協会・団体の会員向けマイページを作るときに決めること|事務局の仕事を増やさない形

会員が自分で住所を変えられる、入金状況を確認できる、受講の残り要件が見られる。会員向けマイページは、事務局に来ている問い合わせをそのまま減らせる仕組みです。ところが実際に作ったあと、事務局の仕事が思ったほど減らないことがあります。

理由はほとんど同じところにあります。会員がマイページから出した内容を、事務局が確認してから名簿に反映している。受付の窓口が電話とハガキからマイページに移っただけで、確認して入力する作業は残っているためです。

このページでは、マイページを作るときに最初に決めること、確認を挟む項目と挟まない項目の切り分け方、全員が使えるわけではない前提での進め方を整理します。会員管理システムそのものの選び方は会員管理システムはパッケージか個別開発かに書いています。

目次(8項目)を開く
  1. マイページを作っても、事務局の仕事が減らないことがある
  2. 会員が自分でやりたいことは、だいたいこの5つ
  3. 減るかどうかは「確認を挟むか」で決まる
  4. 確認を挟む項目・挟まない項目の切り分け方
  5. 全員が使える前提にはできない|ログインと紙の窓口
  6. 最初に作る範囲の決め方|5ステップ
  7. pegのやり方
  8. よくあるご質問

マイページを作っても、事務局の仕事が減らないことがある

マイページを作る目的は、会員が自分でできることを増やして、事務局の手を空けることです。住所変更の電話、入金の確認、修了要件の問い合わせ。これまで1件ずつ応対していたものが、会員の側で完結すれば、事務局の時間はそのぶん戻ってきます。

ところが、公開したあとに「前と変わらない」という声が出ることがあります。会員がマイページから住所変更を出す、事務局に通知が届く、担当者が内容を見て承認する、名簿に反映される。この流れになっていると、受け取り方が変わっただけで、確認して反映する作業はそのまま残っています。

それだけでなく、新しい問い合わせが増えることもあります。「マイページから出したのに、まだ変わっていない」という連絡です。会員から見ると、自分で変えられるはずの画面で操作したのに結果が見えない状態なので、確かめたくなります。

マイページは「会員にやってもらうことを増やす」仕組みではなく、「事務局が確認しなくてよい範囲を決める」仕組みだと考えると、作る範囲が決めやすくなります。

つまり最初に決めるのは画面の数や機能の一覧ではありません。どの項目を、会員の入力でそのまま確定させるかです。ここが決まっていないまま作ると、画面は増えても作業は減りません。

タブレットを手に持っている様子

会員が自分でやりたいことは、だいたいこの5つ

協会・医会・資格運営団体の事務局に来ている問い合わせは、団体が違っても似た形になります。会員の側から見た用件と、そのときに事務局で起きていることを並べると、どこから作ればよいかが見えます。

会員の用件会員が知りたい・やりたいこといま事務局で起きていること
登録内容の変更引っ越した、異動した、連絡先を変えた電話やハガキで受けて、1件ずつ名簿に入力する
会費の支払い状況払ったかどうか自分で分からない入金の記録を調べて折り返す
受講・研修の履歴あと何を受ければ要件を満たすのか受講記録を集計して回答する
証明書・領収書なくしたので再発行してほしい記録を探し、印刷して郵送する
各種の申込研修や大会に申し込みたい申込書を受け取り、内容を確認して台帳に転記する

右の列を見ると、上の4つは「調べて答える」「受け取って入力する」で、事務局が何かを判断しているわけではありません。判断が入るのは一番下の申込だけです。先に手をつけたいのは、判断が入っていない4つです。会員が自分で見られるようにするだけで、問い合わせそのものがなくなります。

会費の請求と入金の管理は会費請求と入金管理をシステムにする方法、受講記録は講習・研修の受講管理をExcelから移行するタイミングと手順に、それぞれ単独で整理しています。

減るかどうかは「確認を挟むか」で決まる

会員の入力に事務局の確認を挟むと、全体の作業量はほとんど変わりません。実際の流れはこうなります。

  1. 会員がマイページから住所変更を出す
  2. 事務局に申請の通知が届く
  3. 担当者が内容を見て、問題がなければ承認する
  4. 名簿に反映される
  5. 反映されるまでの間、会員から「どうなっていますか」と連絡が来る

3番が残っている間は、窓口の形が変わっただけです。しかも5番が新しく増えます。紙とマイページの両方を見ることになるので、担当者の確認先が1つ増えた状態にもなります。

では、すべて確認なしにすればよいのか。そうではありません。会員が自分で変えてはいけない項目はあります。会員の区分、会費の区分、資格の有効期限。これらを会員の操作で変えられるようにすると、別の問題が起きます。

切り分けの基準は単純です。本人しか正しい値を知らない事実か、団体が決める事実か。住所や連絡先は前者で、会員区分や資格の有効期限は後者です。この2つを分けると、確認の要否はほとんど自動的に決まります。

確認を挟む項目・挟まない項目の切り分け方

実際に表にすると、次のような形になります。団体によって会員区分の決め方が違うので、そこだけは事務局の運用に合わせて入れ替えてください。

項目会員の入力でそのまま確定するかそう決める理由
住所・電話番号・メールアドレスそのまま確定本人しか正しい値を知らない。事務局が見ても正しいかどうかは判断できない
勤務先・所属そのまま確定(事務局に通知だけ出す)同じ。ただし所属で会員区分を判定している団体では、通知を見て区分を見直す
氏名の変更事務局で確認証明書や資格の名義と一致している必要がある。改姓の確認を運用で挟んでいる団体が多い
会員区分・会費区分会員は変更できない(申し出として受ける)団体が決める事実。受付はマイページでも、決定は事務局
資格の有効期限・修了状況会員は見るだけ記録から計算される値。入力させるものではない
退会の申し出事務局で確認会費の精算や証明書の扱いが絡む。受付までをマイページで行う

「そのまま確定」にした項目も、いつ誰が何をどう変えたかの記録(変更履歴)は必ず残します。あとで「変えていない」「聞いていない」という話になったときに、履歴がないと確かめようがありません。前の値に戻すときにも使います。

この表は、そのまま開発会社に渡せる材料になります。機能の一覧より先にこれを決めておくと、画面の作りが自然に決まります。業務をどこまで整理してから作るかという話はシステムを作る前に業務をどこまで整理するかに書いています。

全員が使える前提にはできない|ログインと紙の窓口

会員全員がメールアドレスを持っているとは限りません。持っていても使っていない方、職場の共用アドレスで登録している方もいます。マイページを作っても、紙と電話の窓口はしばらく両方残ります。ここで決めるのは、紙で届いたものを誰がどこに入力するかです。

  • 紙で届いた変更届を、事務局がマイページと同じ名簿の画面から入力できるようにしておく。名簿は1つに保てます
  • 紙は従来のExcel、マイページは新しいシステム、と分けると二重管理になります。あとで突き合わせが必要になり、表記のゆれや重複が生まれます(データ移行で詰まる5つのこと)

ログインの作り方も、問い合わせの量に直接ひびきます。

  • ログインIDをメールアドレスにすると、アドレスを変えた会員が入れなくなり、事務局に連絡が来ます。会員番号をIDにして、メールアドレスは連絡先として別に持つほうが問い合わせは少なくなります
  • パスワードの再発行は、会員が自分でできる形にします。仮パスワードを郵送する運用にすると、年度の始めに事務局の作業が集中します
  • 初回の案内をどう届けるかを先に決めます。メールアドレスを把握していない会員には郵送になるので、名簿のメールアドレスの保有率を先に数えておく必要があります

保有率を数えるのは発注側の作業です。何割の会員にメールで案内できるかで、紙の窓口をどこまで残すかが決まり、作る範囲も変わります。

最初に作る範囲の決め方|5ステップ

最初から全部作る必要はありません。順番は、事務局に来ている問い合わせの量で決められます。

  1. いま事務局に来ている問い合わせを1か月分、用件ごとに数える。件数の多い順が、そのまま作る順番になります
  2. その中から「調べて答えるだけ」のものを抜き出す。会員が自分で見られるようにすれば、確認を挟まずに減ります
  3. 変更を受け付ける項目について、確認を挟むか挟まないかを表にする(前の章の形)
  4. 名簿のメールアドレスの保有率を数える。紙の窓口をどこまで残すかが決まります
  5. 最初の公開は「見る」機能だけにして、「変更する」機能を次に回す、という順番も選べます。見るだけでも問い合わせは減ります

5番は、会員が多い団体ほど差が出ます。入金状況と修了要件が自分で見られるようになるだけで、電話の件数は目に見えて変わります。変更機能は、確認の要否が固まってから足せば十分です。

1から4は、事務局でなければ分からないことです。ここが埋まっていれば、開発会社に渡すものはそろいます。相談前に埋めておく項目はヒアリングシートにまとめてあります。どこから手をつけるか迷うときは簡易診断をお使いください。

pegのやり方

pegは、機能の一覧から入らず、事務局の業務を伺うところから始めます。

日本眼科医会の会員管理システムでは、大手ベンダーから前のシステムと同じ規模の刷新提案が出ていました。pegは機能の比較からではなく、事務局の業務のヒアリングから始めて、必要な範囲を先に決めました。そのうえで試作画面(モック)を見ていただき、見え方と操作の流れを確認してから中身の開発に入っています。進め方の詳細は会員管理システムを7か月で作り直すまでに書いています。

ドローン操縦士協会の講習管理では、修了要件の判定をシステム側に入れました。実技が10時間未満であれば修了にできない、要件を満たしていない講師の講習は記録できない、修了要件を満たしているかを一覧で表示する。判定が記録の側に入っていると、受講者が自分の残り要件をそのまま見られる形にできます。集計してから答える作業が、そもそも発生しません。この考え方は理事会・総会の資料づくりを軽くする方法でも同じです。

名簿の表記の統一や重複の整理は、発注側に担っていただく前提でお話しします。正しい値を知っているのは事務局なので、こちらで推測して直すより確実で、作業量も抑えられます。それでも範囲が合わないときは、追加のご相談をするか、お断りすることもあります。費用の決まり方は業務システムの開発費用はいくらかかるのかに書いています。

納品物(プログラム・設計資料・管理者権限)は契約に明記し、担当は必ず2名以上で持ちます。会員の個人情報を扱うので、委託するときに確認していただく項目は会員名簿を外部のシステム会社に渡して大丈夫かにまとめました。協会・団体向けの進め方は協会・医会の方へにもあります。

よくあるご質問

既存の会員管理システムがあります。マイページだけ足せますか。

足せる場合と、足せない場合があります。いまの名簿のデータに外から安全に読み書きできる仕組みがあるか、同じサーバーの中にあるかで決まります。どちらもできない場合、マイページ用のデータを別に持つと二重管理になるので、どちらを正とするかを先に決める必要があります。現物を見せていただければ判断できます。

会員が使ってくれるか心配です。

使われるのは「自分で調べたいこと」からです。残りの修了要件、入金の状況、証明書の再発行のように、これまで事務局に聞かないと分からなかったことが見られると使われます。逆に、申請を出して承認を待つ形は、電話したほうが早いので使われにくくなります。

会費の支払いもマイページでできるようにすべきですか。

決済を入れるかどうかは、マイページとは独立した判断です。入金の記録をどこで管理しているか(会計のソフトか、会員システムか)で手順が変わります。まず「支払い状況を見られる」だけを作って、決済は次の段階にする団体もあります。

住所変更を会員の入力でそのまま反映して、間違いがあったらどうなりますか。

間違った住所を入力したときに困るのは会員本人で、郵便が届かないことで気づきます。事務局が確認しても、その住所が正しいかどうかは分かりません。変更履歴を残しておけば、前の値に戻せます。

セキュリティはどこまで考えればよいですか。

最低限は3つです。本人以外が他人の情報を見られないこと、通信が暗号化されていること、誰がいつ何を変えたかの記録が残ること。委託先に確認していただく項目は委託するときに確認する7項目にまとめています。pegは法律事務所ではありませんので、最終の確認は顧問の弁護士と個人情報保護委員会のガイドラインでお願いします。

このほかのご質問はよくあるご質問に36問まとめています。各社に渡す条件を1枚にする雛形は提案依頼書(RFP)テンプレートにあります。

まずは話すところから

マイページを作るかどうかの前段から、ご相談いただけます。いま来ている問い合わせの整理や、確認を挟む項目の切り分けだけでも構いません。お話を伺って、最初に作る範囲を一緒に決めます。