講習・実技の時間記録を、あとから証明できる形で残す|登録講習機関の帳簿を3年間たどれるようにする
講習を実施している団体では、受講記録はたいてい残っています。出席簿があり、科目ごとの予定表があり、修了証明書の控えもある。それでも、国へ提出する記録として、あるいは監査で示す記録として見直すと、足りないところが出てきます。
足りないのは記録の量ではありません。「この受講者が、どの科目を、いつ、何時間、誰の担当で受けたか」を、あとから1人ずつたどれる形になっていないことがほとんどです。紙の出席簿と手元の表計算を突き合わせれば分かる、という状態は、監査の場では「分かる」とは扱われません。
この記事では、登録講習機関の記録として定められている項目を確認したうえで、それをシステムの仕様としてどう受け止めるかを整理します。
記録はあるのに、1人ずつたどれない
講習の記録は、ふつう「日」の単位で残ります。何月何日にこの科目を実施し、受講者が何名、担当はこの講師。実施した側から見れば、これが自然な残し方です。
ところが、求められる見方は逆向きです。1人の受講者を指定して、その人が修了の要件を満たしているかを示す。日ごとの記録しか残っていないと、1人を追うために全部の日付をめくり直すことになります。受講者が数十名なら持ちこたえますが、年に数百名になると、めくり直す作業そのものが成り立たなくなります。
さらに、途中で欠席して別の日に振り替えた人、限定変更を追加で受けた人、前の年の受講分を持っている人が混ざります。この3つが混ざった時点で、日ごとの記録を人ごとに組み替えるのは手作業では追いつきません。
記録を作る単位は「日」でも、示す単位は「受講者1人」です。この2つが同じデータから出てこない形になっていると、記録はあっても証明には使えません。

残すことが決まっている記録と、その保存期間
無人航空機の登録講習機関について、国土交通省航空局の「登録講習機関の登録等に関する取扱要領」は、帳簿の備付けと保存をこう定めています。省令で定める事項を記載した帳簿を備え、無人航空機講習を終了した日から3年間これを保存する。講習事務を休止・廃止したときは、帳簿その他の書類を遅滞なく国土交通大臣へ電磁的方法で提出する。
そして、同要領の別添では、記録簿等に書く内容が項目まで示されています。システムを作るときは、この項目がそのまま必須の列になります。
| 記録 | 記載することになっている項目 | システム側で決めること |
|---|---|---|
| 講習記録簿 | 講習科目/講習日/講習時間/講師名 | 科目をコードで持つ。時間は分単位で保存し、表示だけ時間に直す |
| 修了審査の採点用紙 | 審査科目/審査日/修了審査員名/減点の回数と細目 | 減点を1件ずつの明細として持つ。合計点だけを持たせない |
| 修了証明書発行台帳 | 発行した証明書の記録(内容と保管は事務規程で定める) | 番号の付け方を決め、発行を取り消した履歴も残す |
| 実施状況の報告 | 日時ごとの講習内容/受講者数/担当講師が分かる記載(望ましいとされている) | 日ごとの集計を、受講者ごとの記録から自動で出す |
注意したいのは、保存期間の起点が「講習を終了した日」であることです。受講者ごとに起点が違うので、年度でまとめて廃棄する運用とは噛み合いません。システムでは、1件ごとに起点の日付を持たせて、そこから数える形にします。
管理者と講師の研修記録については、国土交通省の案内で「三年以上は保管をお願いします」とされています。受講者の記録と保存の年数がそろうので、まとめて1つの決まりとして組み込めます。
実地の時間は「飛んでいた時間」でしか数えられない
ここが、記録のしかたでいちばん差が出るところです。国土交通省の登録講習機関向けのよくある質問では、実地講習の時間について次の扱いが示されています。
- 受講者が飛行していない時間は、実地講習の時間として扱えない
- 機体に触れさせているだけの時間は、実地講習の時間に含まれない
- 具体的な内容のない待ち時間・見学時間も含まれない
- 実地講習は、1人の講師に対して概ね5名以下とされている
つまり、半日の実地講習に5名が参加したとき、5名全員に「4時間」と記録することはできません。順番に飛ばしていれば、1人あたりの時間はその人が操縦していた分だけです。ここを現場の感覚で埋めてしまうと、合計時間は合っているのに1人ずつの根拠がない、という状態になります。
システムの仕様としては、記録の単位を「講習の回」ではなく「受講者 × 科目 × 実施回」に置くことになります。1回の実地講習で5行が立ち、それぞれに開始と終了、担当した講師が入る。入力の手間は増えますが、ここを削ると、あとから作れない記録になります。
動画を使った講習については、講習方法が分かるように、必要履修科目ごとの履修時間とあわせて記録を残すよう案内されています。視聴ログがあるなら、科目と結び付けて同じ表に流し込める形にしておくと、別管理になりません。
同じ科目を基本の飛行と限定変更の両方で実施する場合、重複する部分の時間数は調整してよいとされていますが、講習そのものは実施する必要があります。どちらの要件に何分を割り当てたかを記録に残せる形にしておくと、調整の根拠を示せます。
時間をあとから足し算できる形にする
記録の形が決まったら、次は「要件を満たしているか」の判定です。これを人が表計算で合計している限り、受講者が増えるほど間違いが混ざります。判定はシステム側に持たせます。
- 科目ごとの最低時間を、データとして持つ。プログラムの中に数字を書き込まない。区分(資格の等級・初学者か経験者か・限定変更の種類)ごとに行を持たせ、画面から直せるようにしておく。基準が変わったときに作り直さずに済みます
- 受講者ごとの合計を、記録から自動で出す。科目別の合計、要件に対する残り時間、そろっていない科目を1画面に出す。人が電卓を持たない形にします
- 修了の可否は、判定の結果として出す。担当者が「修了」にチェックを入れるのではなく、要件がそろっているかどうかで決まる。そろっていなければ、修了の手続きに進めない
- 振替と再受講を、同じ受講者の中でつなぐ。別日の記録を同じ人の履歴として並べ、どの回が要件に算入されているかを明示する
- 記録を直したら、直した履歴を残す。誰がいつ何を何に直したか。監査で問われるのは、直したことではなく、直したことが分かるかどうかです
pegがドローン操縦士協会の講習管理でお作りしたものは、この形でした。実技の時間が協会の修了要件に届いていない受講者は、修了の処理に進めない。要件を満たしていない講師では記録そのものを作れない。そして、修了要件の充足状況を受講者ごとに一覧で見られる。判定を人の確認に任せず、システム側に持たせています。
講師と修了審査員の側にも期限がある
受講者の記録だけを整えても、記録が成り立たない場合があります。実施した側の資格が、その日に満たされていたかどうかも記録の一部だからです。
国土交通省の案内では、講師および修了審査員は3年に1回研修を受講する必要があるとされています。修了審査員は、講師として登録された者であり、研修を受けていることが前提です。修了審査員の補助員は登録講習機関に所属している必要があり、受講者が務めることは認められていません。また、自分自身が修了審査員になって自分の飛行を自己採点することも認められていません。
これをシステムの言葉に置き換えると、次のようになります。
| 決まっていること | システムでの受け止め方 |
|---|---|
| 講師・修了審査員は3年に1回の研修 | 研修の受講日を人ごとに持ち、次の期限を自動で出す。期限を過ぎた人は、担当者の選択肢に出さない |
| 担当できる科目が人によって違う | 人と科目の組み合わせを登録し、組み合わせにない記録は作れないようにする |
| 修了審査員は講師として登録された者 | 役割を2つに分けて持ち、講師の登録がない人を審査員に設定できないようにする |
| 自己採点は認められない | 講習を担当した人と採点した人が同じ場合は、保存の前に止める |
| 審査の補助員は所属者に限られ、受講者は不可 | 補助員の欄に、その日の受講者を選べないようにする |
どれも、あとから報告書を作るときに気づくと手が打てないものです。入力の時点で止める仕組みにしておけば、記録は自然と要件を満たした状態で積み上がります。
1年に1回の確認で出す数字を、ふだんの記録から出す
取扱要領では、少なくとも1年に1回、施設・設備、書籍、講師、修了審査員、受講者の成績(再受講率、合格率)を確認し、その結果を記録することとされています。
このうち受講者の成績は、ふだんの記録から出せる数字です。にもかかわらず、確認の時期になって改めて数え直している団体が少なくありません。再受講率と合格率を出すには、受講した人数、修了した人数、再受講した人数が必要で、どれもすでに記録の中にあります。
ですので、システムを作るときは、年1回の確認で出す数字を画面の1つとして最初から入れておきます。期間を指定すれば出る。これだけで、確認の作業は数える作業から見る作業に変わります。確認の記録そのものも、結果と確認した日を残す画面を用意しておけば、別の資料を作らずに済みます。
この考え方は講習の記録に限りません。年に1回まとめて数え直している数字は、ほとんどがふだんの記録から出せます。理事会・総会の資料づくりも同じ話です。
pegの進め方
制度に合わせた記録の仕組みは、仕様書が先にあることがまずありません。手元にあるのは、事務規程、科目の予定表、いま使っている出席簿と表計算、そして「監査でここを聞かれた」という記憶です。pegはそこから始めます。
- いまの運用を伺う。どの記録を誰がいつ作っているか、どこで突き合わせが起きているかを、業務の言葉のまま書き出します
- 記録として示すべき項目を、制度の文書に当てて確認する。条文や要領の記載を根拠として並べ、解釈が分かれる点は団体側で確認いただく形にします
- 画面を先に作ってお見せする。受講者1人の画面、実地講習の入力画面、要件の充足一覧。文字の仕様書ではなく、動く画面で合っているかを確かめます。日本眼科医会の会員管理システムでも、この順番で仕様を固めました
- 判定と制限を作り込む。要件を満たさない記録を作れないようにする。ここが制度に合わせた仕組みの中心です
- 作って、公開して、引き継げる形で納める。プログラムと設計資料、管理者の権限を納品物として契約に明記します
pegは全ての案件を2名以上で担当し、納品後3か月の不具合対応を契約に書いています。制度に合わせた仕組みは、作ったあとに基準が変わります。そのときに直せる状態で渡すことまでが仕事だと考えています。
よくあるご質問
制度の要件の解釈まで決めてもらえますか
解釈そのものは、所管の官庁と団体の間で決まるものです。pegがお手伝いできるのは、公表されている条文・要領・質疑応答を根拠として並べ、「この読み方だとシステムはこうなる」という形に整理するところまでです。分かれる点は、確認していただく論点として一覧にしてお渡しします。
いまの出席簿と表計算のデータは引き継げますか
引き継げます。ただし、日ごとにまとまっている記録を受講者ごとに組み替える必要があるので、どこまで遡って移すかは最初に決めます。保存期間が「講習を終了した日から3年間」なので、その範囲を確実に移し、それより古いものは参照できる形で別に置く、という分け方をよく取ります。
実地の時間を1人ずつ入れるのは、現場の負担が大きくないですか
そのままだと大きいので、入力の形を工夫します。その回の受講者を一覧で出し、開始と終了を押すだけで記録が立つ。あとから一括で直せる。この2つがあれば、紙の出席簿に書く手間とほぼ変わりません。現場で使う画面は、実際に担当される方に触っていただいてから決めます。
基準が変わったときに作り直しになりませんか
科目と最低時間、担当できる人の条件を、プログラムではなくデータとして持つ作りにしておきます。数字や条件が変わったときは、管理画面から直せます。記録の項目そのものが増えるような改正は手が入りますが、その場合も設計資料と管理者の権限をお持ちなので、どこを直すかが追えます。
講習の申込や修了証明書の発行まで、一緒にできますか
できます。申込、受講記録、修了審査、証明書の発行を1つのデータでつなぐと、台帳を別に作る必要がなくなります。申込から修了証の発行までの流れはこちらの記事で整理しています。どこから手をつけるかは、いま手間がかかっている順に決めるのが現実的です。
まずは話すところから
社内に分かる人がいない状態でも、手元にある材料から整理できます。何から話せばよいか決まっていなくてもかまいません。ご相談は無料です。
