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修了の判定を、毎回人の目で確かめなくてよい形にする|登録講習機関の合否判定基準を、システムの仕様に直す

講習を終えた受講者が、修了したのか、していないのか。記録がそろっていても、最後は担当者が表を見ながら決めている事務局が多いです。受けた科目と時間、修了審査の採点、再受講の有無をひとつずつ突き合わせる作業で、人数が増えるほど時間がかかり、年度末に集中します。

ただ、判定の中身は制度の側でかなり細かく決められています。登録講習機関であれば、修了の要件と合否の判定基準を書類にして届け出ていて、そこに書いたとおりに判定していることを、あとから示せる必要があります。担当者が都度判断しているわけではなく、すでに決まっているルールを実行しているはずなのです。

決まっているルールの実行であれば、システムに移せます。この記事では、無人航空機の登録講習機関について国土交通省が定めている要領を材料に、修了判定をどこまで仕様に直せるかを書きます。協会・資格団体の講習でも、考え方はそのまま当てはまります。

目次(8項目)を開く
  1. 修了かどうかを、人が毎回表で確かめている
  2. 判定の前に、「受けられるか」の判定がある
  3. 合否の基準は、数で書くことになっている
  4. ひとつの不合格が、ほかの判定にも及ぶ
  5. 再受講と再審査は、前の記録を上書きしない
  6. 修了証明書には期限があり、取り消すこともある
  7. pegの進め方
  8. よくあるご質問

修了かどうかを、人が毎回表で確かめている

修了判定でつまずくところは、だいたい次の5つに集まります。

  • 科目ごとの受講記録はあるが、1人分を横に並べて「全部そろったか」を見る画面がない
  • 修了審査の採点は紙で、合否だけを表計算に転記している。どの項目で減点したかは紙にしか残らない
  • 再受講した人の扱いが担当者ごとに違う。前の結果を消す人と、残す人がいる
  • 判定が終わったあとに記録の誤りが見つかると、どこまでやり直すのか決まっていない
  • 年に1回まとめる数字(再受講の割合など)を、そのたびに紙と表計算から数えている

共通しているのは、記録を残す仕組みはあるのに、記録から判定を出す部分だけが人の手に残っていることです。記録の整え方は別の記事(講習・実技の時間記録を、あとから証明できる形で残す)で書いたので、ここでは判定そのものを扱います。

木の机に置かれた、記入欄のある用紙とペン

判定の前に、「受けられるか」の判定がある

登録講習機関の登録に関する国土交通省の取扱要領では、届け出る書類として「修了審査を受けることのできる者の要件」と「修了の要件」が別に挙がっています。つまり判定は1回ではなく、2段あります。審査の席に着いてよい状態になっているかの判定と、終えた結果が修了に届いたかの判定です。

ここを1つにまとめてしまうと、審査を受けたあとで「そもそも受講が足りていなかった」と分かる事故が起きます。システムでは、2つを別の状態として持たせます。

制度で決まっていることシステムでの受け止め方
修了審査を受けることのできる者の要件を定め、書類として届け出る受講者ごとに「審査に進める状態か」を、記録から自動で出す。足りない科目・時間をその場に並べて見せる
修了の要件を定め、書類として届け出る要件を項目の集まりとして登録し、判定はその集まりの充足で出す。担当者が足し算をしない
学科を全部免除される人の入校もあり得る免除を「受講済み」と同じ扱いにせず、免除として記録する。何を根拠に免除したかを残す
修了審査員は、指定試験機関の研修を終えている必要がある審査員の資格の期限を持たせ、期限内でない人では採点を登録できないようにする

4つ目は、pegがドローン操縦士協会の講習・実技時間の管理で実際に入れている仕組みです。要件を満たさない講師では記録そのものが登録できないようにしてあるので、あとから「この回は誰が見ていたのか」でもめることがありません。

合否の基準は、数で書くことになっている

同じ取扱要領の別添には、講習事務規程に書く内容として「シラバスにおいて各講習の合否判定基準を明確にし、学科講習及び実地講習ともに定量的な評価方法について記載」とあります。言い回しだけの基準ではなく、数で書くことが求められています。数で書かれた基準は、そのまま計算式にできます。

記録の側も、何を書くかが決まっています。講習の記録簿と、修了審査の採点用紙で、残す項目が違うところが設計の勘所です。

記録記載することになっている項目システム側で決めること
講習の記録簿講習科目、講習日、講習時間、講師名科目を要件の単位にそろえる。あとから時間を足し算できる形で入れる
修了審査の採点用紙修了審査科目、修了審査日、修了審査員名、減点回数と減点の細目合否だけでなく減点の細目を項目として持つ。合否は細目から計算で出す

採点用紙に減点の細目まで書くことになっているのに、システムには合否しか入れていない、という組み合わせがいちばんもったいないところです。細目を項目として持っておけば、合否の判定は計算で出せるようになり、同時に「どの科目でつまずく人が多いか」もそのデータから見えます。

学科については、国土交通省の登録講習機関向けのよくある質問に、オンラインで行う場合は修了確認試験の実施が必須、座学や対面の場合は必須ではないが確認試験の実施が推奨される、という整理が載っています。実施の形によって必要な記録が変わるので、科目には「どの形で行ったか」も持たせておきます。

ひとつの不合格が、ほかの判定にも及ぶ

同じよくある質問には、こうも書かれています。基本飛行の修了審査に不合格の場合は、夜間飛行または目視外飛行(限定変更)の修了審査も不合格となる、と。

これは、判定の設計としてかなり大きな話です。判定項目を画面に並べたチェックボックスで表すと、それぞれが独立しているように見えます。けれども実際には、片方の結果がもう片方を決めてしまう関係があります。チェックボックスを並べただけの画面では、基本飛行が不合格なのに限定変更に合格の印が付いた状態を作れてしまいます。

  1. 判定項目のあいだの関係を、先に書き出す。「Aが不合格ならBも不合格」という形で並べる
  2. その関係を、入力の制限ではなく判定の計算に入れる。入力をふさぐやり方だと、あとで基本飛行の結果が変わったときに追随しない
  3. どれかの結果が変わったら、関係する判定をすべて出し直す。出し直した記録も残す
  4. 画面には、計算で出た結果と、その根拠になった項目を並べて出す

3つ目を入れておくかどうかで、あとの手間が大きく変わります。関係を計算に入れていれば、記録の訂正が1か所あっても、関係する判定は自動でそろいます。入れていないと、訂正のたびに人が追いかけることになり、そこが抜けると帳簿と証明書の内容が食い違います。

再受講と再審査は、前の記録を上書きしない

不合格になった人をどうするかについて、国土交通省のよくある質問は、技能が安全な飛行に達しているかという観点から、再審査や修了証明書の交付の可否を登録講習機関が責任をもって判断するという整理をしています。つまり、やり直しの道があること自体は前提で、その判断の仕方を機関が決めて示すことになります。

そのうえで取扱要領は、受講者の成績について「講習を行った結果について、各講習のシラバス毎に再受講率を確認し、その結果を記録すること」「講習を修了した者の無人航空機操縦士試験合格率を確認し、その結果を記録すること」とし、その結果をもとにシラバスや講習の内容を定期的に見直す手順を事務規程に定めることまで求めています。

ここから出てくる設計上の結論はひとつです。判定は「人ごとの最終結果」ではなく、「回ごとの結果」として残します。最終結果だけを上書きで持つと、再受講の割合が出せません。何人が何回受けたかが消えてしまうからです。

  • 受講・審査の1回を1件として記録し、人ごとの修了状態はその集まりから計算で出す
  • 再受講・再審査は、前の記録を消さずに次の件として足す。何回目かが分かるようにする
  • 再審査を認めた判断の根拠(補講を受けた、自主的な練習の記録があるなど)を、その件に添えて残す
  • 再受講の割合と、修了後の試験の合格の割合は、ふだんの記録から自動で出す。年に1回数え直さない

pegがドローン操縦士協会の管理で作っているのも、この形です。修了の要件を満たしているかどうかを受講者ごとに一覧で出し、足りない項目がその場で分かるようにしてあります。実技の時間が要件に届かない状態では修了にできないようにしているので、判定が担当者の記憶に左右されません。

修了証明書には期限があり、取り消すこともある

修了証明書についても、取扱要領は書くべきことを並べています。証明書には期限を明記しなければならないこと、その期間は1年後の前日までとすること、紛失したときの再交付の受付の条件、そして交付と再交付が適切であることを示すための発行台帳の内容と保管の方法です。

判定が出て証明書を出したら終わり、という作りにすると、ここで困ります。期限が来るもの、再び出すもの、そして取り消すものがあるからです。取り消しについては、別添に「なりすましやカンニングその他不正行為が発覚した際にとるべき対応について明確に記載」とあり、要領の本文では、事務規程で定める不正な受講者の処分について、その事実があったときは遅滞なく国土交通大臣に報告するものとされています。

  • 証明書は、判定の結果とは別の記録として持つ。1つの判定に対して、初回の交付と再交付が複数ひもづく
  • 期限は証明書ごとに持たせ、交付の日から計算する。一覧で期限の近いものを並べられるようにする
  • 取り消しは、記録を消す操作ではなく、取り消しという状態を足す操作にする。いつ、何を理由に取り消したかが残る
  • 国へ報告する事柄は、報告した日と内容も記録の側に残す。あとから経緯をたどれる

このあたりは、会員管理のシステムでも同じ形になります。pegが日本眼科医会の会員管理を作り直したときも、資格や所属の状態は上書きではなく、いつ何が変わったかを足していく形にしました。上書きで持つと、過去のある時点の状態を答えられなくなります。制度に関わる記録では、そこが後から必ず問われます。

pegの進め方

修了判定のシステムは、画面を作るところから始めません。先に、判定のルールを文字に落とすところから始めます。

  1. いま届け出ている書類と事務規程を見せていただき、修了の要件と合否の判定基準をそのまま書き出す
  2. 書き出したものを、項目と計算式の形に直す。ここで「書類には書いてあるが、運用では別の扱いをしている」ところが必ず見つかるので、どちらに寄せるかを決める
  3. 判定項目のあいだの関係(片方の不合格がもう片方を決めるもの)を洗い出して、計算に入れる
  4. 受講者1人の画面を試作して、実際の受講者のデータで判定を出してみる。いまの判定結果と突き合わせて、違うところの理由を全部つぶす
  5. そのうえで、登録・採点・証明書の画面を作る

2番目で見つかる食い違いが、このしごとのいちばん大事なところです。ここを飛ばして画面を作ると、動くけれども現場が使わないシステムになります。pegは業務の話を伺うところから入り、試作画面で仕様を固めてから中身の実装に進みます。制度の解釈そのものを決めるのは機関の側のしごとですが、決めたことを漏れなく仕様に写す部分は、こちらで引き受けられます。

社内にシステムの分かる人がいなくても、仕様書がなくても進められます。事務規程と、いま使っている表計算があれば、そこから始められます。

よくあるご質問

判定のルールが今後変わったら、作り直しになりませんか

判定の条件をプログラムに書き込まず、登録して差し替えられる形にしておけば、条件の数や閾値が変わっても設定の変更で済みます。制度に関わるシステムでは、変わることを前提に作ります。

いまの紙の採点用紙を、そのままの形で残したいのですが

紙の様式を変えずに進められます。採点用紙の項目をそのまま入力の項目にして、紙は紙で保存し、システム側では減点の細目まで持たせる形が多いです。現場の手順を変えないほうが、記録の抜けが少なくなります。

過去の受講者のデータも移せますか

移せます。ただし、過去分は「回ごとの記録」の形になっていないことが多いので、どこまで細かく戻せるかを最初に確かめます。戻せない部分は、移行時点の状態として記録し、そこから先は回ごとに積む形にします。

制度の要件の解釈まで決めてもらえますか

解釈を決めるのは機関の側のしごとです。pegは、決めた内容を漏れのない仕様に写す部分と、根拠をあとからたどれる形にする部分を担います。所管の窓口に確認が必要な点は、質問の形に整えてお渡しします。

申込から修了証明書の発行までを、まとめて1つにできますか

できます。判定を中心に置くと、申込・受講記録・採点・証明書が同じデータでつながるので、転記がなくなります。順番としては、判定の部分を先に固めるほうが手戻りが少なくなります。

まずは話すところから

社内に分かる人がいない状態でも、手元にある材料から整理できます。何から話せばよいか決まっていなくてもかまいません。ご相談は無料です。