資格を満たさない講師では、記録を作れない形にする|登録講習機関の講師・修了審査員の要件を、システムの仕様に直す
講習を行う機関では、「誰が教えてよいか」が制度の側で細かく決まっています。年齢、技能証明、技能証明を受けてからの飛行経験、そして研修の受講。どれかが欠けている人が講習を担当していたとなれば、その回の記録そのものが疑われます。
それでも多くの事務局では、講師の資格は人の記憶と紙の束で管理されています。誰がどの等級のどの機種を担当できるのか、研修をいつ受けたのか。急に代わりの講師を立てる場面になってはじめて、確かめようがないことに気づきます。
この記事では、無人航空機の登録講習機関について国土交通省が定めている取扱要領と、国土交通省の登録講習機関向けのよくある質問を材料に、講師と修了審査員の要件をシステムの仕様としてどう受け止めるかを書きます。協会や資格団体の講習、指導員を抱える団体でも、考え方はそのまま当てはまります。
講師の一覧が、あちこちにある
講師のことで困る場面は、だいたい次の5つに集まります。
- 講師の名前が、届出の様式、事務規程の別添、組織図、講習の記録簿にそれぞれ書かれていて、どれが最新なのか分からない
- 誰がどの等級のどの機種を担当できるのかが、担当者の頭の中にしかない
- 研修をいつ受けたのかが、紙の修了証明書の束を探さないと分からない
- 年に1回の確認のたびに、技能証明の写しや経験を示す書類を探し回る
- 急に代わりの講師を立てたあと、届出の書類を作り直すのが追いつかない
記録の残し方そのものは別の記事(講習・実技の時間記録を、あとから証明できる形で残す)で、記録から修了を判定する部分は修了の判定を、毎回人の目で確かめなくてよい形にするで書きました。この記事で扱うのは、その記録を作る人の側の資格です。ここが崩れると、記録も判定も根拠を失います。

講師の資格は「人に1つ」ではない
取扱要領の講師等の条件の表では、共通の条件として18歳以上であること、過去2年間に講習事務に関し不正な行為を行った者などでないことが挙げられています。そのうえで、担当する講習の種類ごとに技能の条件が分かれます。一等の講習を行う講師は「技能証明を受けた後1年以上無人航空機を飛行させた経験」、二等の講習を行う講師は「技能証明を受けた後6月以上無人航空機を飛行させた経験」、またはそれと同等以上の能力を有することとされています。
さらに国土交通省のよくある質問では、講師の経験および飛行経験・実績は、講師が担当する無人航空機の種類(回転翼航空機(マルチローター)、回転翼航空機(ヘリコプター)、飛行機)ごとのものとする、と整理されています。飛行経験にシミュレーターでの飛行は含まれず、実際に飛行した実績に限られます。一等の講師の条件では二等での飛行も実績として数えられ、限定変更の講師の条件では基本の飛行も実績として数えられます。
ここから分かるのは、講師の資格を「その人が講師かどうか」という1つの印で持つと足りない、ということです。資格は人の属性ではなく、人と等級と機種の組み合わせに付きます。
| 制度が決めていること | システムでの受け止め方 |
|---|---|
| 講師の条件は、担当する講習の種類に応じて定められている | 資格を人に1つ持たせず、「人×等級×機種」の組み合わせごとに持たせる。担当できる範囲が画面でそのまま読める |
| 経験と飛行実績は、担当する無人航空機の種類ごとに数える | 飛行の記録に種類の区分を必ず付ける。区分がない過去の記録は、どの種類にも数えない扱いにする |
| 飛行経験にシミュレーターは含まない | シミュレーターの記録は別の区分で持ち、要件の計算には足さない。現場では両方を記録したいので、消さずに分ける |
| 一等の条件では二等での飛行も、限定変更の条件では基本の飛行も実績に数えられる | どの記録をどの条件に数えるかを設定として持つ。計算式をプログラムに書き込まない |
| 当面の間は、講習団体での講師経験(一等は1年以上、二等は6月以上)と直近2年間の飛行実績(一等は100時間以上、二等は50時間以上)によっても条件を満たせる経過措置がある | 条件の満たし方が複数あるので、その人がどの道で満たしたかを記録に残す。経過措置が終わったときに、誰を見直すべきかが分かる |
いちばん下の行が、あとから差が出るところです。満たしているかどうかだけを印で持つと、制度が変わったときに全員を調べ直すことになります。どの条件で満たしたかを残しておけば、調べる相手が絞れます。
期限は3つある
講師に関わる期限は、1つではありません。取扱要領とよくある質問を合わせると、少なくとも3つあります。
| 何の期限か | 制度が決めていること | システムで持つ項目 |
|---|---|---|
| 講師研修 | 講習事務を開始する前に受講する。定期的な確認で、登録講習機関が実施する講師研修を3年以内に受講していることを確認し、その結果を記録する | 受講日と、そこから計算した次の期限。等級ごとの受講の記録(一等の講師研修を修了すれば二等の修了と見なされる取り扱いも設定で持つ) |
| 修了審査員研修 | 指定試験機関が実施する研修を受講し、定期的な確認で期限内の修了証明書を持っていることを確認し、その結果を記録する | 証明書ごとの期限。一等と二等で機種の限定が異なる場合は、それぞれの受講の記録を別に持つ |
| 講習事務の定期確認 | 少なくとも1年に1回、講師・修了審査員が条件の表の基準を満たしていることを確認し、その結果を記録する | 確認した日・確認した人・確認の結果。確認そのものが記録として求められている |
順番にも決まりがあります。よくある質問によれば、講師として登録されていない人は修了審査員研修を受講できず、一等の修了審査員研修は一等の講師の条件を満たしている人のみが対象です。講師の条件を満たす前に受けた研修は認められないため、条件を満たしたあとに講師研修を受講することになります。
つまり、講師の資格は「条件を満たす → 講師研修 → 修了審査員研修」という順に積み上がります。システムでも同じ順序で持たせておくと、順番が入れ替わった記録をそもそも作れません。先に修了審査員研修の受講日だけが入っていて、講師としての登録が後になっている、という状態を防げます。
資格を満たさない人では、記録を作れないようにする
取扱要領の別添では、無人航空機講習の記録簿に、講習科目・講習日・講習時間とともに、講習を行った講師名を記載することになっています。記録簿に講師名が載るということは、その講師がその日にその科目を担当できる状態だったかが、あとから問われるということです。
だとすれば、講師名を自由に文字で入力させる作りにしてはいけません。その日その科目を担当できる資格のある人だけが選べる形にします。pegがドローン操縦士協会の講習・実技時間の管理で実際に入れているのも、この仕組みです。要件を満たさない講師では記録そのものを登録できないようにしてあるので、あとから「この回は誰が見ていたのか」でもめることがありません。
- 講師ごとに、担当できる等級・機種・飛行方法の限定を登録する
- 研修の受講日とそこから計算した期限を持たせ、講習日の時点で期限内だったかを判定する。今日の状態ではなく、その日の状態で見る
- 科目と日付を選んだ時点で、選べる講師の一覧をその条件で絞る。絞られた理由も画面に出す
- 記録には、選んだときに満たしていた条件(等級・機種・研修の受講日)を一緒に残す。あとで講師の登録が変わっても、過去の記録の根拠は動かない
2番目と4番目が、作るときに抜けやすいところです。今日の資格で判定してしまうと、研修の期限が切れた瞬間に、過去の正しい記録まで要件を満たさない扱いになります。逆に、過去の記録に根拠を添えていないと、講師の登録を1行直しただけで、何年分の記録の説明がつかなくなります。
人が入れ替わるときに出す書類は決まっている
講師が増えたり代わったりするときに出すものも、要領で決まっています。事務規程の変更として届け出るのは変更届出書と別添の講師一覧表で、登録時に提出した書類に関わる変更があれば、その修正書類を添付します。添付の対象には、講師の条件への適合を宣誓する様式、講師の氏名等を記載する様式、条件への適合を証する書類、講師経験の証明、飛行実績、組織図、所属形態によっては業務委託契約書が挙げられています。
様式に書く項目を見ると、システムで持っておくべき項目がそのまま分かります。講師の氏名、担当科目、専任または兼任の別、登録講習機関の講師研修を修了した日、実地の様式では修了審査員研修の受講の有無です。専任は講師のみを行う人、兼任は修了審査員や管理者等を兼ねる人という区分も、様式の注記で示されています。
- 講師の台帳に、届出の様式に必要な項目をそのまま持たせる。届出のたびに別の表を作り直さない
- 兼任の区分を項目として持つ。1人が講師と修了審査員と管理者を兼ねている状態を、1件の登録で表す
- 所属形態(役員・雇用・業務委託)を項目として持つ。よくある質問では、講師の業務は業務委託であっても個人との契約に限られ、他の法人への再委託は認められないとされているので、ここは曖昧にしない
- 役割の区分も持たせる。たとえば外部の講師はEラーニングの監修者として認められないという整理があるため、担当できる役割を人ごとに持っておく
- 講師一覧表と様式に合う形で出力できるようにする。様式が変わることは前提なので、項目と出力の形は分けて作る
預かる書類の扱いも、同時に決めておきます。登録申請の審査では、履歴書、住民票の写しまたはマイナンバーカード等、技能証明書の写しなどで条件への適合を確認することになっています。システムに写しを置くなら、誰が見られるのか、いつまで持つのかを先に決めてください。会員名簿を外部のシステム会社に渡して大丈夫かでも、預ける側・預かる側の確認事項を書いています。
年1回の確認を、探し物にしない
定期的な確認は、少なくとも1年に1回と定められています。講師については条件の表の基準を満たしていることと、講師研修を3年以内に受講していること。修了審査員については条件の表の基準と、修了審査員研修の期限内の修了証明書を持っていること。いずれも、確認したうえでその結果を記録することとされています。
ここが、紙と表計算のままだと毎年同じ探し物になる部分です。項目として持たせておけば、確認は画面を開いて見るだけの作業に変わります。そして確認した日と確認した人、結果を記録として残せば、その記録が制度の求めるものになります。
- 期限の近い人を一覧で出す。切れてから気づく状態をなくす
- 確認の結果を、確認した日と人とともに1件の記録として残す。次の年はその続きから見られる
- 条件を満たさなくなった人は、登録を消さずに「担当できない状態」にする。過去の記録との結びつきを切らない
- 実地講習では講師1名あたり概ね5名以下とする整理があるため、時間割を組む段階で人数の上限を見られるようにしておく
3番目は、会員管理のシステムでも同じ形になります。pegが日本眼科医会の会員管理を作り直したときも、資格や所属の状態は上書きではなく、いつ何が変わったかを足していく形にしました。上書きで持つと、過去のある時点の状態を答えられなくなります。制度に関わる記録では、そこが後から必ず問われます。
pegの進め方
講師の管理は、記録簿や判定より小さく作れます。その代わり、最初に決めることがはっきりしています。
- いま届け出ている講師一覧表と様式、事務規程を見せていただき、講師ごとに担当できる範囲を全部書き出す
- 書き出した範囲を、等級・機種・飛行方法の限定の組み合わせに直す。ここで「一覧表には載っているが、実際には担当していない」組み合わせが必ず出てくるので、どちらに寄せるかを決める
- 研修の受講日と期限、確認の記録の持ち方を決める。過去の受講日がどこまで分かるかを確かめ、分からない分の扱いを決める
- 講習の記録を作る画面で、講師を選ぶところだけを先に試作する。実際の講習日のデータで、選べる人・選べない人が合っているかを突き合わせる
- そのうえで、台帳・期限の一覧・確認の記録・届出用の出力を作る
4番目を先に試すのが、このしごとの勘所です。講師を選ぶところが現場の感覚と合っていれば、あとは積み上げるだけになります。制度の解釈そのものを決めるのは機関の側のしごとですが、決めたことを漏れなく仕様に写す部分は、こちらで引き受けられます。
社内にシステムの分かる人がいなくても、仕様書がなくても進められます。いま使っている講師一覧表と、研修の修了証明書の束があれば、そこから始められます。
よくあるご質問
講師が数人しかいません。システムにする意味はありますか
人数が少ないほど、1人の期限切れが講習の日程に直接当たります。小さい団体では、台帳と期限の一覧だけを先に作って、記録簿や判定はあとから足す形が多いです。
技能証明や修了証明書の写しも、システムに入れたほうがよいですか
入れられますが、預かる範囲と見られる人、保存する期間を先に決めてください。写しを置かずに、確認した日と確認した人の記録だけを残す形でも、定期的な確認の記録としては成り立ちます。
経過措置の条件で講師になった人は、どう記録しますか
どの条件で満たしたかを項目として残します。講師経験で満たした人と、技能証明の取得後の飛行経験で満たした人を分けておけば、取り扱いが変わったときに見直す相手が絞れます。
届出の書類をシステムから出せますか
様式に合わせた出力は作れます。ただし様式は変わるものなので、項目の持ち方と出力の形は分けて作ります。様式が改まったときに、出力だけを差し替えられる形にしておきます。
講師の管理だけを先に作って、あとで広げられますか
できます。講師・等級・機種の組み合わせを最初に正しく持たせておけば、講習の記録簿、修了の判定、修了証明書の発行はその上に足していけます。順番としては、講師の管理を先に固めるほうが手戻りが少なくなります。
あわせて読みたい
講師・指導員の労働時間管理|制度の記録と同じ1日から数える
同じ1日を、制度の記録と働いた時間の両方として数える持ち方。
修了の判定を、毎回人の目で確かめなくてよい形にする|登録講習機関の合否判定基準を、システムの仕様に直す
まずは話すところから
社内に分かる人がいない状態でも、手元にある材料から整理できます。何から話せばよいか決まっていなくてもかまいません。ご相談は無料です。
