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指定管理者の報告業務をシステムに寄せる|月次・年次・随時を、同じ記録から出す

指定管理を受けている施設の事務局から、同じ相談を何度か伺いました。毎月10日までに月次の報告を出し、年度が終わるとまた同じ数字を集めて事業報告書を作る。利用者数も、収支も、事故も、苦情も、月次で一度書いたものを年次でもう一度書き直している、という話です。

これは担当者の段取りが悪いから起きているのではありません。自治体が示している様式が、月次と年次で別々に作られていて、同じ項目が両方に並んでいるからです。様式の側は変えられないので、手を入れられるのは記録の持ち方のほうになります。

この記事では、公開されている自治体のモニタリングマニュアルと運用ガイドラインを読んだうえで、報告業務のどこをシステムに寄せると二度手間がなくなるのかを書きます。応募や選定の進め方には触れません。

目次(8項目)を開く
  1. 月次と年次で、同じ数字を2度作っている
  2. 報告は1種類ではなく、5つの階層になっている
  3. 期限と区切りは、自治体ごとに違う
  4. 記録は1件ずつ持ち、報告はあとから出す
  5. 「報告を求め、実地について調査し」に備える
  6. 利用者の声・事故・修繕は、文章の前に件数で持つ
  7. システムに寄せる順番
  8. よくあるご質問

月次と年次で、同じ数字を2度作っている

群馬県桐生市が公開している指定管理者モニタリングガイドラインには、月次の業務報告書と年次の事業報告書の記載項目が、それぞれ別に並んでいます。その中身を見比べると、同じ名前の項目が両方に出てきます。

項目月次の業務報告書年次の事業報告書
事故、故障等の内容及びその対応記載する記載する
苦情、要望等の内容及びその対応記載する記載する
利用者数、稼働率等利用状況として記載記載する
利用不許可、利用制限等の件数及びその理由-記載する
管理経費の収支状況-記載する

月次で書いたものが年次でそのまま使えるなら問題はありません。ところが実際には、月次はその月のできごとを文章で、年次は1年分をまとめた文章で書くことになります。1年分をまとめるには12か月ぶんの報告書を開き直して、数えて、書き直すことになる。これが二度手間の正体です。

しかも年次にだけある項目があります。桐生市の年次の記載項目には「利用不許可、利用制限等の件数及びその理由」が入っています。月次の様式にその欄がなければ、1年が終わってから1年ぶんを思い出すことになります。

日が差し込む、木の床の体育館。開いた扉の向こうに外の光が見える

報告は1種類ではなく、5つの階層になっている

報告は年に1回ではありません。公開されている資料を並べると、頻度の違う報告が重なっていることが分かります。大阪府の府営住宅指定管理者モニタリングマニュアルは、いちばん細かく書き分けている例です。

頻度大阪府(府営住宅)の定め
毎日日誌等を作成する。「必要に応じて府が確認を行うので、常時閲覧できるようにしておくこと」
毎週業務状況表を作成・提出する。府への提出期限は翌週木曜日
毎月月間業務報告書を作成・提出する。府への提出期限は翌月15日
半期指定管理者業務評価票を提出する。期限は10月15日と4月15日。指定1年目は四半期ごと
年度毎年度開始前の2月末日までに事業計画書、毎年度終了後30日以内に事業報告書

ここで大事なのは、上の段と下の段が別の仕事ではないということです。毎週の業務状況表に書く内容は、毎日の日誌から出てきます。月間業務報告書は、その4〜5週ぶんです。半期の評価票は、6か月ぶんの月間報告から組み立てます。

つまり、この5段は「集計の単位が違うだけで、元の記録は同じ」です。にもかかわらず、様式が5種類あるために、5回それぞれを別の作業として手で作っている。システムに寄せる値打ちがあるのは、まさにここです。

日誌については、大阪府のマニュアルに「常時閲覧できるようにしておくこと」とあります。提出するものではなく、求められたときに見せるものという位置づけです。この違いは、あとで出てくる随時の報告とつながります。

期限と区切りは、自治体ごとに違う

複数の自治体から受託していると、ここでもう一段ややこしくなります。同じ「事業報告書」でも、期限が自治体ごとに違います。公開されている資料から、そのまま並べます。

自治体月次の報告年度の事業報告書
桐生市翌月10日までに市に提出する毎年度終了後60日以内
直方市翌月10日までに報告する毎年度終了後60日以内
大阪府(府営住宅)翌月15日毎年度終了後30日以内
むつ市日報及び月報に記録する(提出期限の定めなし)毎年度終了後60日以内
山口市必要がある場合に月ごと・四半期ごと等で求める毎年度終了後60日以内
世田谷区定期的な報告を求める(頻度の明記なし)各年度の終了後速やかに

30日以内の自治体と60日以内の自治体があり、「速やかに」としか書いていない自治体もあります。月次の提出日も10日と15日に分かれ、そもそも月次の提出を定めていない自治体もあります。

この表から出てくる結論はひとつです。様式に合わせてシステムを作ると、受託している施設の数だけ別物ができあがります。 来年どの施設が増えるか減るかは分かりませんから、様式に合わせた作りは、増えるたびに作り足すことになります。

作るべきなのは、様式ではなく記録のほうです。記録の形をそろえておけば、様式が何種類あっても、出すときに並べ替えるだけで済みます。

記録は1件ずつ持ち、報告はあとから出す

では記録をどう持つか。考え方は単純で、報告書の1行ではなく、できごとの1件を持つということです。月次の報告書を1件のデータとして持ってしまうと、年次を作るときに文章から数字を取り出すことになります。

報告で求められていること記録としての持ち方
利用者数、稼働率等日付・施設・部屋・区分ごとに1件。月も年度も、合計するだけで出る
使用料又は利用料金の収入実績入金の1件ずつ。報告の区切りは期間の指定で決める
管理経費の収支状況支出の1件ずつ。費目は自治体の様式にそろえておく
事故、故障等の内容及びその対応発生日・場所・内容・対応・完了日で1件。月次と年次は同じ1件を参照する
苦情、要望等の内容及びその対応受付日・経路・内容・対応・完了日で1件
利用不許可、利用制限等の件数及びその理由その場で1件として残す。理由は選択肢で持つ

右の列をそろえておくと、月次の報告書は「その月を指定して出す」、年次の事業報告書は「その年度を指定して出す」だけになります。数え直しは起きません。桐生市の年次にだけある「利用不許可、利用制限等の件数」も、断った時点で1件残していれば、年度末に思い出す必要がなくなります。

pegがドローン操縦士協会で作った講習・実技の管理も、同じ考え方でした。修了証に印字する時間数を直接持つのではなく、1回ごとの実技を1件として残し、合計は出すときに計算しています。あとから1人ずつたどれるのは、合計ではなく1件ずつを持っているからです。

「報告を求め、実地について調査し」に備える

定期の報告のほかに、いつ来るか決まっていない確認があります。根拠は地方自治法第244条の2第10項です。

「普通地方公共団体の長又は委員会は、指定管理者の管理する公の施設の管理の適正を期するため、指定管理者に対して、当該管理の業務又は経理の状況に関し報告を求め、実地について調査し、又は必要な指示をすることができる。」(地方自治法第244条の2第10項)

年度の事業報告書のほうは、同条第7項で「指定管理者は、毎年度終了後、その管理する公の施設の管理の業務に関し事業報告書を作成し、当該公の施設を設置する普通地方公共団体に提出しなければならない。」と定められています。この2つは性質が違います。

  • 第7項は「提出しなければならない」。出す時期も中身も決まっているので、カレンダーと様式で足ります
  • 第10項は「求め」「調査し」「することができる」。いつ来るか決まっていないので、ここはシステムで持つ意味があります

実地調査の頻度を定めている自治体もあります。桐生市は「毎年度1回以上定期的に実地調査を行う」としたうえで、別に随時の実地調査を置いています。直方市も「市は、定期的な施設への立入等により、現地で業務遂行状況の確認を行う」としています。むつ市は、市民からの苦情・要望等があった場合に「随時実地調査やヒアリング等を実施し」と書いています。

つまり、苦情が1件入ると、そこから確認が始まることがあるということです。そのとき必要になるのは報告書の束ではなく、「その件がいつ入って、誰が何をして、いつ終わったか」を1件だけ取り出せることです。検索して1件を開けるようにしておくと、ここで探す時間がなくなります。

利用者の声・事故・修繕は、文章の前に件数で持つ

報告書の様式では、苦情も事故も自由記入の欄になっていることが多くあります。だからシステムでも文章欄を1つ用意して終わり、としてしまいがちです。ところが自治体側の評価は、文章ではなく数と対応で見ています。

  • むつ市の評価表には「利用者の声とその対応状況」という欄があります。声そのものではなく、対応まで組で見られます
  • 大阪府の業務評価票には「事故、災害等の緊急時の連絡体制が確保されている。」「施設の維持修繕に関する業務を行っている。」という評価項目があります。できごとではなく、体制と実施の有無が問われています
  • 直方市のチェックシートには「緊急時の連絡体制を確立している。」が入っています
  • 世田谷区のガイドラインは「利用状況には施設利用率など客観的にわかりやすい指標を記載する。」としています

ここから言えるのは、1件ごとに「受け付けた日」と「対応が終わった日」を別々に持つということです。この2つがあれば、件数も、未対応の件数も、対応までにかかった日数も、あとから出せます。1つの文章欄にまとめて書いてしまうと、どれも出せません。

修繕も同じです。発生と着手と完了を別の日付で持つと、年度の報告に書く実施状況がそのまま出ます。金額の欄は自治体の様式にそろえておけば、収支の表と突き合わせる手間もなくなります。

文章の欄をなくすという話ではありません。文章は残したうえで、日付と区分を別に持つ、ということです。

システムに寄せる順番

全部を一度に作る必要はありません。手で作っている時間が長いところから順に寄せると、早い段階から楽になります。

  1. いま出している報告を全部並べる。 施設ごと・自治体ごとに、頻度と期限と様式を1枚の表にします。ここで初めて「同じ項目が何回出てくるか」が見えます
  2. 重なっている項目に印を付ける。 月次と年次の両方にある項目が、二度手間になっているところです。桐生市の例でいえば事故と苦情と利用者数がそれに当たります
  3. 重なっている項目だけ、1件ずつの記録に切り替える。 全項目を作り直さなくてかまいません。印を付けたところから始めます
  4. 期間を指定して出す形にする。 月を指定すれば月次、年度を指定すれば年次。様式ごとの並べ替えは、出すときの設定にします
  5. 1件を検索して開ける状態にする。 随時の確認に答えるのはこの機能です。一覧ではなく、1件を名指しで取り出せることが要ります

この順で進めると、最初の数か月で月次の作成時間が減り、年度末にまとめて起きていた作業が平らになります。様式が増えても、足すのは出し方だけになります。

pegは、仕様書がない状態からでも、いま使っている様式と報告の実物を見せていただくところから始めます。上の1と2は、こちらでお手伝いできる部分です。

よくあるご質問

自治体ごとに様式が違います。それぞれに合わせたシステムが必要ですか。

記録の持ち方をそろえておけば、様式ごとに別のシステムを作る必要はありません。出すときの並べ替えだけを様式の数だけ用意する形にします。新しい施設を受託したときに足すのも、出し方の1つだけで済みます。

いまはExcelで月次の報告書を作っています。これをそのまま取り込めますか。

取り込めますが、報告書の形のまま取り込むと二度手間は残ります。報告書の1枚を1件として入れるのではなく、中に書いてあるできごとを1件ずつに分けて入れるところまでやると、年次が自動で出るようになります。過去ぶんをどこまでさかのぼるかは、作業量を見ながら決めるのが現実的です。

実地調査のときに、画面を見せる形で足りますか。

自治体によって求め方が違うので、画面と印刷の両方を用意しておくのが安全です。大事なのは、その場で言われた1件をすぐ開けることと、その1件に対応の経過が全部つながっていることです。

指定の期間が5年です。期間が終わったあとのデータはどうなりますか。

次の指定を受けられるかが決まっていない以上、データの引き渡し方を契約の段階で決めておくことをおすすめします。pegがお作りする場合は、プログラム・設計資料・管理者権限を納品物として契約に明記しています。データを持ち出せる形で出せるかどうかは、最初に確かめておくとよい点です。

小さい施設ひとつだけでも作る意味はありますか。

施設が1つでも、月次と年次で同じ項目を書いているなら年に12回ぶんの書き直しが起きています。ただ、施設が1つで報告の項目も少ない場合は、表計算の持ち方を変えるだけで済むこともあります。まず上の1と2をやってみて、重なりが少なければ作らないという判断も十分にあります。

まずは話すところから

社内に分かる人がいない状態でも、手元にある材料から整理できます。何から話せばよいか決まっていなくてもかまいません。ご相談は無料です。