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補助金の実績報告に耐える、経費と証拠書類の残し方|支出1件を、あとから突き合わせられる形にする

補助金や助成金を受けた事業は、終わったあとに実績報告を出します。このとき事務局から求められるのは、使った額の合計ではありません。支出の1件ずつについて、いくらで、誰に、いつ発注し、いつ届き、いつ払ったのかを、別々の紙で示すことです。

合計額は会計ソフトから出ます。詰まるのは、その合計をつくっている1件の支出に、見積書・発注書・納品書・請求書・振込の控えがそろっているかを確かめるところです。書類そのものは社内にあるのに、1件とひもづいていないので、提出の直前に全部を机に並べ直すことになります。

この記事では、国と自治体が公開している交付要綱・事務手引き・留意事項の原文をもとに、何を1件の単位として持てば実績報告の直前に慌てずに済むかを整理します。報告書の集計そのものは 指定管理者・受託事業の報告業務 で、申請から承認までの社内の回し方は 紙とハンコの申請業務 で扱っているので、ここでは1件の支出と書類のつながりだけを見ます。

目次(8項目)を開く
  1. 困るのは、書類がないからではない
  2. 支出1件に、書類が何枚ついてくるか
  3. 「要らない」と書いてある書類がある
  4. 払ったことの証明だけは、代わりがきかない
  5. 按分した経費は、計算の過程ごと残す
  6. 保存期間は「何年」ではなく「いつから何年」
  7. pegのやり方
  8. よくあるご質問

困るのは、書類がないからではない

実績報告の準備で起きていることを、順に書き出すとこうなります。

  • 会計ソフトに補助対象の支出が並んでいるが、どの支出がどの見積書に対応するのかが分からない
  • 請求書はメールの添付、納品書は紙、振込の控えはネットバンキングの画面と、置き場所が3か所に分かれている
  • 1件だけ書類が足りないことに気づくが、それがどの支出なのかを探すために全件を見直す
  • 担当者が替わっていて、なぜその経費を補助対象に入れたのかが誰にも分からない
  • 事務局から「この1件の内訳を見せてください」と言われたとき、その1件だけを取り出せない

どれも、書類がないから起きていることではありません。書類はあります。足りないのは、支出1件と書類をつなぐ線です。会計ソフトは金額を正しく集計しますが、その1件に紙が何枚ぶら下がっているかまでは持っていません。実績報告で求められているのは、まさにその「1件に何枚」のほうです。

伝票や領収書が横から見えるように積み重なっている様子

支出1件に、書類が何枚ついてくるか

公開されている手引きを読むと、経費の区分ごとに求められる書類が書き下されています。茨城県の手引きは「証拠書類は対象経費ごとに整理し、保存してください。」と書いたうえで、区分ごとに次のように並べています。

経費の区分求められている書類(原文の表記)出典
設計費・設備費・工事費・賃借料・システム構築費・委託費など見積書、発注書又は契約書、納品書(完了報告書)、請求書、支払明細書茨城県の手引き
原材料費上の書類に加えて、受払簿茨城県の手引き
人件費(実績単価で計算する場合)時間単価算出表、個人別月額人件費集計表、業務日誌、給与明細等の支払明細書、タイムカードまたは出勤簿茨城県の手引き
旅費旅費集計表、旅費算出表、出張命令書・出張報告書・出張旅費明細書(タクシー等を使った場合は領収書)茨城県の手引き
設備費見積依頼書・カタログ等、見積書、発注書または契約書、納品書(検収記録付き)、請求書、写真国の補助金の事務手引書
事務費(需用費・役務費・使用料など)領収書、納品書(請求日、金額、購入品名等が確認できるもの)静岡県の案内

ここから読み取れることは3つあります。

  1. 1件の支出に対して、書類は1枚ではありません。 少ないもので領収書1枚、多いものでは6種類が1件にぶら下がります。だから保存の単位は「書類」ではなく「支出1件」になります。
  2. 書類の種類が、経費の区分で変わります。 同じ金額の支出でも、設備なら納品書と写真、人件費なら業務日誌とタイムカードです。区分を決めないと、何をそろえればよいかが決まりません。
  3. 人件費と旅費には、お金の動き以外の記録が混ざります。 業務日誌・出勤簿・出張命令書は、経理の書類ではなく現場の記録です。実績報告の直前に書けるものではないので、事業をやっている最中に残っていないと間に合いません。

システムに落とすときは、この3つがそのまま仕様になります。支出を1件ずつの行で持ち、区分を1つ選ばせ、区分ごとに必要な書類の枠をあらかじめ出す。枠が埋まっていない1件を一覧で取り出せるようにする。これだけで、提出の直前に全件を見直す作業がなくなります。

「要らない」と書いてある書類がある

見落とされやすいのが、手引きに「不要」と書いてある項目です。静岡県の案内には、人件費の証拠書類について「対象となる月の給料の支給状況が分かる、賃金台帳や給料明細など」と書いたすぐ横に、「時給、日給単価による計算の場合、不要」とあります。事務費についても、「水光熱費や月々固定のレンタル料、リース料、自前の印刷料等については、処理が煩雑なため不要」と書かれています。

つまり、同じ経費の区分でも、計算のしかたや費目によって、求められる書類が変わります。全件に同じ枚数を求めると、現場は不要な紙を集めることになり、本当に足りていない1件が埋もれます。

国の補助金の事務手引書には、別の形の「代わり」も書かれています。相見積りが取れないときは、2者以上から見積を断られたことを示す資料か、国内で唯一の提供先であることを示す資料を添えるという形です。見積書が2通そろっていない状態にも、それでよいと言える道が用意されています。

ここをシステムで持つときは、書類の枠を「必須・任意・不要」の3つに分けておきます。不要と判断した1件には、なぜ不要なのか(時給単価で計算した、月々固定の費目である、唯一の提供先である)を一言だけ残せるようにします。この一言があるかないかで、あとから見た人が調べ直すかどうかが変わります。

支出の金額が一定の額を超えると2者以上の見積書または選定理由書を求める、という決め方をしている制度もあります。その基準となる額は制度ごとに違うので、しきい値はプログラムに書き込まず、制度ごとに設定できる値として持たせます。

払ったことの証明だけは、代わりがきかない

証拠書類のなかで、ほかの書類で代用できないものが1つあります。払ったことの証明です。

石川県の留意点には「経費の支払方法は、銀行振込(ATM、インターネットバンキング含む)とします。」とあり、やむを得ない事情がある場合は事前に相談するよう書かれています。国の補助金の事務手引書では、支払を確かめる資料は補助事業者の口座からの銀行振込か、補助事業者名義のクレジットカードの1回払いに限られています。

名義についても決まりがあります。石川県の留意点は「本補助事業における見積書、契約書(注文書・注文請書)、納品書、請求書、振込受領書等は、原則として、申請者名義(交付決定通知の名義)のみが対象となります。」と書いています。社長個人のカードで立て替えた、別会社の名義で発注した、といった1件は、書類がそろっていても対象から外れます。

この3つは、支出の行に項目として持つのがいちばん簡単です。

  • 支払方法(銀行振込/カード1回払い/その他)。「その他」を選んだら、事前相談の記録を求める
  • 支払った名義。交付決定の名義と違う値が入ったら、その場で気づける形にする
  • 支払が済んだ日。人件費と旅費は、実績報告の時点で支払が終わっている必要があると書いている手引きがあります

「支払が済んだ日」を発注日や納品日と同じ欄で管理していると、まだ払っていない1件が報告に混ざります。日付は、発注・納品・請求・支払の4つを別々の項目として持ちます。

按分した経費は、計算の過程ごと残す

補助事業だけに使ったのではない経費は、按分して計上します。茨城県の手引きは賃借料について「利用料の請求が月ごとの場合、按分等の方式により補助事業期間に応じた金額を算出してください。」と書いています。国の事務手引書では、借りた場所の一部だけを補助事業に使う場合に、使用部分が分かる図面と按分計算書を求めています。

按分した1件は、請求書を見ても金額が合いません。請求書は10万のところ、報告には3万と書いてあるからです。合わない理由を説明する紙が、請求書とは別に必要になります。

困るのは、この計算が担当者の手元の表計算ファイルにしかないときです。1年後に「この3万はどう出した数字ですか」と聞かれても、ファイルがどこにあるか分からない、ファイルはあるが式が壊れている、ということが起きます。

システムに持たせるなら、按分した1件には次の3つを残します。

  1. 按分する前の額(請求書に書いてある額)
  2. 按分の根拠(期間なら日数や月数、面積なら平米、人なら時間数)
  3. 按分したあとの額(報告に載る額)

3つを項目として持つと、根拠から計算し直せるので、表計算ファイルを探さなくて済みます。人件費の時間単価や原材料の受払簿も、同じ考え方です。合計だけを持たず、合計をつくっている数を持ちます。

保存期間は「何年」ではなく「いつから何年」

証拠書類の保存期間は、どの制度にも書いてあります。ただし、年数より大事なのは数え始める日です。公開されている規程を3本並べると、起算点がそれぞれ違います。

資料原文の表記数え始める日
岐阜県の補助金交付規則関係の規程 第17条規則第22条に規定する書類、帳簿等(以下「証拠書類等」という。)の保存期間は、補助事業の完了の日の属する年度の翌年度以後5年間とする。事業が完了した年度の、翌年度から
厚生労働省の交付要綱の留意事項当該調書及び証拠書類を事業の額の確定の日(事業の中止又は廃止の承認を受けた場合には、その承認を受けた日)の属する年度の終了後5年間保管すること。額が確定した年度が終わってから
国の補助金の交付規程 第20条第2項補助事業者は、報告をした場合、その証拠となる書類を当該報告に係る会計年度の終了後3年間保存しなければならない。報告した会計年度が終わってから

同じ5年でも、完了した日から数えるか、額が確定した日から数えるかで、終わる時期が1年ずれます。額の確定は完了より後に来るからです。3本目のように、事業そのものではなく報告のたびに数え直す決め方もあります。

だから保存期間は「5年」という数字では持てません。起算の日と年数を別々の項目として持ち、そこから終わりの日を計算して表示します。 制度を1つ足すたびに、その制度の起算点を選ばせる形にしておけば、補助金を複数受けていても捨ててよい年が1件ずつ分かります。

保存しておく中身にも幅があります。たとえば事業で買った物を処分制限期間の中で手放すときは、実績報告書一式、とくに取得財産等管理台帳が要ると書いている資料があります。報告が終わったあとも、報告に出した書類そのものを取り出せる状態にしておく必要があります。静岡県の案内が「1~3の提出書類は、必ず同じものをコピーして保管してください。」と念を押しているのも、同じ理由です。

なお、公益法人の備置き・報告の話は 公益法人の事業報告と立入検査 で、委託を受けた側が預かった情報をどう扱うかは 委託先として、発注元の監督にどう答えるか で扱っています。

pegのやり方

pegは、協会や官公庁の記録を扱うシステムをつくってきました。補助金の実績報告と同じ形の仕事が、いくつかあります。

  • ドローン操縦士協会では、講習と実技の時間を1件ずつ記録し、修了の要件を満たしているかを一覧で見られるようにしました。合計時間だけを持たず、合計をつくっている1件ずつを持つという考え方は、経費と証拠書類のひもづけとそのまま同じです。
  • 日本眼科医会の会員管理では、改姓を扱う仕組みが以前のシステムになく手作業になっていたところを自動化し、はがきなど関連する帳票にも連動するようにしました。1か所の変更が関係する書類に伝わる形にしておくと、あとからの突き合わせが要らなくなります。

最初にやるのは、いまの事務のしかたを伺うことです。どの制度の補助金を受けているか、経費の区分は何で分けているか、書類をどこに置いているか、誰が按分を計算しているか。仕様書はなくてかまいません。手元の表計算ファイルと、昨年度の実績報告書の控えがあれば、そこから必要な項目を起こします。

画面は先につくって見ていただきます。支出を1件入れてみて、必要な書類の枠が出て、足りない1件が一覧に出るところまでを目で確かめてから、中身の開発に入ります。

よくあるご質問

会計ソフトを入れているのに、別のシステムが要るのですか。

会計ソフトは金額を正しく集計します。実績報告で求められるのは、その1件に書類が何枚ついているかと、足りない1件はどれかです。会計ソフトの仕訳に、書類の枠と区分だけを外付けで持たせる形もよく使います。入れ替えずに足せるかどうかは、お使いのソフトの書き出し機能を見てから判断します。

書類は紙で保存しています。そのままでよいですか。

紙のままでも、どの1件に対応するのかが分かれば報告は通ります。システム側では、紙の束のどこにあるか(箱の番号・綴りの番号)を1件ごとに持たせる形にします。全部を取り込まなくても、どこを見ればよいかが分かれば、探す時間はほぼなくなります。

補助金を複数受けていて、経費の区分がばらばらです。

区分は制度ごとに設定できる形にします。1つの支出が複数の制度にまたがることはないはずなので、支出1件には制度を1つだけひもづけ、区分はその制度の一覧から選ばせます。保存期間の起算点も制度ごとの設定にしておくと、1本の仕組みで両方を扱えます。

事業が終わってから作っても間に合いますか。

経理の書類だけなら、あとからでもそろいます。ただし業務日誌・出勤簿・出張命令書のように、事業をやっている最中にしか書けない記録が混ざる区分があります。人件費や旅費を補助対象に入れる予定があるなら、事業が始まる前に記録の形を決めておくほうが、あとが楽です。

小さく始めることはできますか。

できます。支出の一覧と、区分ごとの書類の枠、足りない1件の抽出。この3つだけでも、提出前の見直しはかなり短くなります。按分の計算や保存期間の管理は、次の段階として足せます。まず何に時間を取られているかを伺ってから、順番を決めます。

まずは話すところから

社内に分かる人がいない状態でも、手元にある材料から整理できます。何から話せばよいか決まっていなくてもかまいません。ご相談は無料です。