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講師・指導員の労働時間管理|制度の記録と同じ1日から数える

講習や検定を回している団体では、講師や指導員の1日が、2か所に書かれています。ひとつは制度に出すための記録で、何時から何時まで、どの科目を、誰が担当したかが入っています。もうひとつは勤怠の記録で、その人が何時に来て何時に帰ったかが入っています。中身はほとんど同じなのに、別々の表に、別々のタイミングで書かれていることが多いものです。

このページでは、同じ1日を2つの目的で数える、という前提でシステムをどう組むかを書きます。制度に出す側の記録の作り方は講習・実技の時間記録にまとめたので、ここでは繰り返しません。扱うのは、その同じ記録から、働いた時間としての数字を出す側です。

根拠として読んだのは、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」、労働安全衛生法第66条の8の3と労働安全衛生規則、労働基準法第36条の上限についての労働局・自治体の解説資料です。条文の言い回しは、そのまま仕様の指示になっている箇所だけを引きます。

目次(8項目)を開く
  1. 同じ1日が、2つの台帳に分かれている
  2. 数える相手が、制度ごとに違う
  3. 取り方が決まっている。自己申告は例外として扱う
  4. 入力できる上限を、システム側で作らない
  5. 月の数字は、1つでは足りない
  6. 締め日と、本人への通知を仕組みに入れる
  7. pegのやり方
  8. よくあるご質問

同じ1日が、2つの台帳に分かれている

講師が午前に学科を2コマ、午後に実技を3時間見たとします。この日について残さなければならない記録は、少なくとも2種類あります。

  • 制度に出す記録。どの講習の、どの科目を、何時間、誰が担当したか。受講者が要件を満たしたかどうかの裏づけになります
  • 働いた時間の記録。その人が何時から何時まで指揮命令下にいたか。賃金の計算と、長時間労働の確認の材料になります

現場で起きているのは同じ出来事です。それなのに台帳が2つに分かれると、片方を直してももう片方が古いまま残ります。講習が1コマ増えた、実技が天候で短くなった、担当が途中で交代した。こうした変更は制度側の記録にはすぐ反映されますが、勤怠の側は月末にまとめて入力されるので、気づかれないまま締まります。

逆の向きもあります。勤怠の側で「この日は半休」と入っているのに、制度側の記録ではその日に実技を3時間見たことになっている。どちらかが間違っているのですが、2つの表を突き合わせる人がいないと、そのまま両方が保存されます。

出発点を1つにできれば、この食い違いは起きません。1日の出来事を1件ずつ記録して、制度に出す数字と、働いた時間の数字を、そこから別々に計算する。やることはこれだけです。難しいのは、2つの制度が「誰を数えるか」「どう数えるか」をそれぞれ別に決めているところです。

日が差し込む壁に掛けられた丸い時計と、壁に落ちたその影

数える相手が、制度ごとに違う

ここが最初のつまずきです。労働時間を把握する義務は1つではなく、根拠が2つあって、対象になる人の範囲が違います。

厚生労働省のガイドラインは、対象となる労働者を「労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除く全ての者」と書いています。第41条に定める者には、たとえば管理監督者が当たります。

一方、労働安全衛生法第66条の8の3は「厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第1項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない」と定めています。除かれるのは次条第1項の者、つまり高度プロフェッショナル制度の対象者だけです。労働局のリーフレットは、対象について次のように書いています。

「労働時間の状況の把握は、労働者の健康確保措置を適切に実施するためのものであり、その対象となる労働者は、高度プロフェッショナル制度対象労働者を除き、①研究開発業務従事者、②事業場外労働のみなし労働時間制の適用者、③裁量労働制の適用者、④管理監督者等、⑤派遣労働者、⑥短時間労働者、⑦有期契約労働者を含めた全ての労働者です。」

つまり、管理監督者や裁量労働制の人は、賃金を計算するための労働時間管理の対象からは外れていても、健康を確保するための労働時間の状況の把握からは外れません。講習団体でいえば、事務局長が自分で実技を見ている、ベテランの指導員が管理職を兼ねている、といった人がここに当たります。

何のための把握か根拠対象から外れる人
労働時間の適正な把握(賃金・時間外の管理)労働基準法と厚生労働省のガイドライン労働基準法第41条に定める者、みなし労働時間制が適用される労働者
労働時間の状況の把握(面接指導のため)労働安全衛生法第66条の8の3、労働安全衛生規則第52条の7の3高度プロフェッショナル制度の対象者のみ

システムの仕様としては、ここが決定的です。人の情報に「労働時間管理の対象かどうか」というチェック欄を1つだけ置くと、どちらの意味のチェックなのか決められなくなります。目的ごとに母集団が違うので、持つべきは「この人は何に当たるか」という区分であって、対象かどうかの○×ではありません。管理監督者なのか、裁量労働制なのか、事業場外のみなしなのか、高度プロフェッショナル制度の対象者なのか。それを持っておけば、どちらの名簿も区分から導けます。

なお、ガイドラインは対象から外れる労働者についても「健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務があること」としています。外れる人の記録を取らない設計にはできない、と読んでおくほうが安全です。

取り方が決まっている。自己申告は例外として扱う

どちらの制度も、記録の取り方を先に決めています。ガイドラインは、始業・終業時刻を確認し記録する方法として「原則として次のいずれかの方法によること」とし、使用者が自ら現認する方法と、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」の2つを挙げています。

労働安全衛生規則第52条の7の3第1項も「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする」と書いています。この「その他の適切な方法」が自己申告に当たりますが、解釈通達は、それが許されるのは「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」だとしたうえで、こう釘を刺しています。

「直行又は直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない。」

外の会場で講習をやる団体にとっては、ここが引っかかります。会場に打刻の端末がないから手書きで出してもらう、という運用がそのままでは通りません。

仕様に直すと、こうなります。1件の記録に「どうやって取った記録か」を必ず持たせる。打刻なのか、受講管理システムの操作ログなのか、現認なのか、自己申告なのか。そして自己申告のときだけ、なぜ客観的な方法で取れなかったのかという理由を同じ行に入れる。あとから見て、自己申告の割合がどのくらいか、どの会場に偏っているかが出せる形にしておきます。

取り方一緒に持つものなぜ必要か
打刻・入退室の記録端末または場所客観的な記録として原則どおり
システムの操作ログどの画面での操作か講習の記録そのものが時間の裏づけになる
現認確認した人「使用者が、自ら現認する」に当たる
自己申告客観的な方法で取れなかった理由例外であることを記録に残す

保存については、ガイドラインが「出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第 109 条に基づき、3年間保存しなければならない」としています。労働安全衛生規則第52条の7の3第2項も、把握した労働時間の状況の記録を作成し「3年間保存するための必要な措置を講じなければならない」と書いています。期間はどちらも3年ですが、ガイドラインの解説は、起算点を「それらの書類ごとに最後の記載がなされた日」としています。年数だけを持つと足りない、という話は補助金の実績報告と証拠書類に書いたので、そちらを見てください。

入力できる上限を、システム側で作らない

制度の文章のなかで、システムの作りにいちばん直に跳ね返るのがここです。ガイドラインは、自己申告制による場合に講ずべき措置として、こう書いています。

「使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。」

入力の上限を作ってはいけない、と書いてある要求は珍しいものです。ふつう、入力欄には何らかの制限をかけます。1日24時間を超えたら弾く、月45時間を超えたら赤くして保存させない。親切のつもりで入れたその制限が、ここでは禁じられている措置そのものになります。

では何もしないのかというと、そうではありません。同じガイドラインは、客観的なデータと自己申告のあいだに「著しい乖離が生じているとき」は、実態調査を実施して所要の労働時間の補正をすること、としています。つまり、止めるのではなく、両方残して並べる。仕組みとしてはこうなります。

  1. 申告された時間は、そのまま保存する。上限で弾かない
  2. 入退場の記録やシステムの操作時間など、事業場内にいた時間が分かるデータがあれば、同じ日について別の列で持つ
  3. 2つの差が決めた幅を超えたら、確認が要る日として一覧に出す。保存は止めない
  4. 調査して直したときは、元の値を消さず、補正後の値と、直した理由を3つ目として足す

元の値・理由・直した後の値を3つとも残す形は、補助金の実績報告で按分の計算を残すときと同じ持ち方です。あとから説明を求められる記録は、だいたいこの形になります。

ガイドラインは続けて、「時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないか」を確認するよう求めています。システムの画面に出す注意書きも、この「措置」に入り得ると考えておくほうがよいでしょう。入力欄のそばに「45時間以内で入力してください」と書くだけでも、申告を抑える方向に働きます。

月の数字は、1つでは足りない

時間外労働の上限は、労働基準法第36条に基づく協定で決まります。労働局の解説資料によると、原則は1か月45時間以内、1年360時間以内です。1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、それぞれ42時間、320時間になります。

臨時的な特別の事情を定めた協定(特別条項)を結んだ場合は、次の条件を全部守ることになります。宮崎県と長崎労働局の資料から、原文の数字をそのまま並べます。

  • 1年720時間以内(時間外労働)
  • 時間外労働と休日労働の合計で、1か月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計で、2〜6か月平均80時間以内
  • 1か月45時間を超えるのは年6か月まで

ここで見落としやすいのは、4つの条件が同じものを数えていない点です。1つ目と4つ目は時間外労働だけで数え、2つ目と3つ目は休日労働を足して数えます。月の合計を1つだけ持っているシステムでは、この4つを同時に判定できません。

3つ目の「2〜6か月平均」も、月ごとの合計だけを持っていると確かめられません。何か月分を平均するかが1通りではない書き方なので、連続する月をまたいだ計算が要ります。そして過去の月の数字が、あとから補正で変わることがある。平均を計算して結果だけを保存しておくと、元の月が直されたときに古い判定が残ります。

賃金台帳の側にも、粒度の指示があります。ガイドラインは、労働基準法第108条と同法施行規則第54条により「労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならない」としています。休日労働と時間外労働と深夜労働が別々に並んでいる。これはそのまま、1日の記録を何で分けて持つかの指示です。

制度が決めていることシステムでの受け止め方
原則は月45時間・年360時間(1年単位の変形労働時間制なら42時間・320時間)時間数は固定で書かず、協定の種類ごとの設定値として持つ
時間外労働だけで数える条件と、休日労働を足して数える条件がある1日の記録を、所定内・時間外・休日・深夜に分けて持つ。月の合計は1つにしない
2〜6か月平均で判定する条件がある月の数字は1件ずつ保存し、平均は毎回その場で計算する。結果だけを持たない
月45時間を超えられるのは年6か月まで超えた月を数える。年度の区切りは協定の対象期間に合わせる
一部の事業・業務では扱いが異なる人ではなく、協定と業務の区分に時間数をぶら下げる

講習団体で実際に起きるのは、繁忙期の集中です。年度末に講習が固まり、同じ指導員が連日出る。そのときに問題になるのが2〜6か月平均で、月単位では収まっているのに平均で外れる、ということが起こります。月が締まってから気づくのでは遅いので、今の積み上がりから月末の見込みを出せるようにしておきます。

締め日と、本人への通知を仕組みに入れる

集計をいつやるかも、決められています。労働安全衛生規則第52条の2第2項は、時間外・休日労働が1か月あたり80時間を超えた時間の算定について「毎月一回以上、一定の期日を定めて行わなければならない」としています。月に1回以上、しかも期日を決めて。給与計算の締め日とたまたま同じになっているだけの団体は、ここを明示的に決め直しておくとよいでしょう。

そして算定したあとに、通知の義務が来ます。同条第3項です。

「事業者は、第1項の超えた時間の算定を行つたときは、速やかに、同項の超えた時間が一月当たり80時間を超えた労働者に対し、当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報を通知しなければならない。」

労働局の解説は、この通知について「高度プロフェッショナル制度の対象労働者を除き、管理監督者、事業場外労働のみなし労働時間制の適用者を含めた全ての労働者に適用されます」としています。s2で見た母集団の話が、ここでもう一度出てきます。賃金の計算では時間外の対象外になっている人に、時間数を通知しなければならない。対象者の一覧を1本しか持っていないと、この通知先が作れません。

方法については、書面や電子メール等により通知する方法が適当とされ、「給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されている場合には、これをもって労働時間に関する情報の通知としても差し支えありません」とも書かれています。既に出ている明細で足りる場合があるということです。ただし管理監督者の明細にその欄があるかどうかは、団体ごとに違います。

面接指導のほうは、労働安全衛生規則第52条の2第1項が要件を定めています。休憩時間を除き1週間あたり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が「一月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者」であることとされ、実施は本人の申出によります。システム側でできるのは、該当した人を漏らさず出すこと、通知した記録を残すこと、申出を受け付ける口を用意して受けた日を残すことです。判断そのものは人がやります。

誰にいつ何を知らせたかを記録として残す、という作りは、更新や期限の案内と同じ形です。案内の回数と記録の持ち方は更新期限の案内にまとめてあります。

pegのやり方

pegは、1つの出来事から複数の集計を出す、という形で組みます。勤怠のシステムを別に買って横に並べるのではなく、すでにある講習の記録を集計の材料として使えるところまで持っていきます。

たとえばドローン操縦士協会では、講習と実技の時間を管理する仕組みを作っています。そこでは、要件を満たさない講師では記録そのものができないようにしました(資格の持ち方は講師・修了審査員の要件に書いています)。この記録は制度に出すために作ったものですが、1行のなかに「誰が・いつ・どこで・何時間」が入っています。働いた時間を数える材料としても、そのまま使える形です。

進め方は、だいたいこの順番になります。

  1. いま何をどこに書いているかを、紙と画面の両方で並べる。講習の記録、出勤簿、謝金の計算表、会場の鍵の受け渡し簿まで含めて見ます
  2. 同じ出来事を書いているものを束ねて、どれを出発点にするかを1つ決める
  3. 人の区分(管理監督者、裁量労働制、事業場外のみなしなど)を先に整理する。母集団がここで決まります
  4. 1日の記録に、取り方と内訳(所定内・時間外・休日・深夜)を持たせる
  5. 月の判定と通知は、その記録から計算して出す。数字は画面に表示するだけで、保存はしない

3番目を先にやるのが大事なところです。ここを後回しにすると、集計の式を書いてから「この人は対象外でした」と言われて、作り直しになります。

社内にエンジニアがいなくても、仕様書がなくても進められます。いまの運用を伺って、画面の形にしてから中身を作ります。

よくあるご質問

講習の記録と勤怠の記録は、本当に1つにできますか。

記録を1つにするというより、出発点を1つにします。1日の出来事を1件ずつ残して、制度に出す数字と働いた時間の数字を、そこから別々に計算する形です。出てくる帳票は今までどおり2種類で構いません。

外部の講師にお願いしている場合も、同じ記録が要りますか。

雇用しているのか、業務として委託しているのかで変わります。そこの切り分けは団体ごとの契約の話になるので、社会保険労務士の先生に確認してください。システム側では、同じ講習の記録から、どちらの集計にも出せる形にしておきます。

打刻の端末がない会場では、どうすればよいですか。

解釈通達は、直行や直帰であることだけを理由に自己申告で済ませることを認めていません。会場で使う受講管理の画面があるなら、その操作の記録が客観的な記録になります。それも難しいときは自己申告になりますが、なぜ取れなかったのかを記録に残しておきます。

月45時間を超えそうなときに、入力を止めるようにできますか。

できますが、そうしないほうがよい場面です。ガイドラインは、申告できる時間数に上限を設けて超える申告を認めないような措置を講じてはならない、としています。止めるのではなく、申告はそのまま保存して、確認が要る日として一覧に出す作りにします。

いまExcelで管理していますが、作り直しになりますか。

いまの表が、1日1行で、誰が・いつ・何時間が入っているなら、そのまま移せることが多いです。月ごとの集計表しか残っていない場合は、元になった記録がどこにあるかを先に探します。まずは今の表を見せていただくところから始めます。

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