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基幹システムを止めずに新しい仕組みを足す方法|外付けで足せるかの見分け方

新しくやりたいことが出てきたとき、社内でいちばん多く返ってくる答えが「基幹システムには触れないでほしい」です。止まれば出荷も請求も止まるので、当然の判断だと思います。

ただ、触らないことと、何もできないことは別です。いまのシステムをそのまま動かしたまま、その外側に必要な部分だけを足せる場合があります。実際の仕事でも、この形が選ばれることは少なくありません。

このページでは、外付けで足せるかどうかをどこで見分けるのか、そして相談の前に自社でそろえておけるものを整理します。

目次(8項目)を開く
  1. 「基幹システムには触れないでほしい」から話が始まる
  2. 外側に足したいと言われるのは、だいたいこの5つ
  3. 足せるかどうかは、4つの質問で分かる
  4. 中を直す・外に足す・入れ替えるの3つ
  5. 正とするデータを1か所に決める
  6. 相談の前に自社でそろえておく6ステップ
  7. pegのやり方
  8. よくあるご質問

「基幹システムには触れないでほしい」から話が始まる

販売管理、生産管理、会計、受発注。業務の中心にあるシステムは、止まった瞬間に会社の仕事が全部止まります。だから改修の相談を社内に持ち込むと、情報システムの担当者や保守をしている会社から「そこは触れない」と返ってきます。

断られる理由は、だいたい次の3つです。

  • 保守の契約が「現状を動かし続けること」までで、改修はその範囲に入っていない
  • 作った会社がもう対応していない、または当時の担当者が代わって中身を把握している人がいない
  • 直したときの影響がどこまで及ぶか、誰も言い切れない

3つのどれも、担当者の消極的な姿勢ではなく、事実としてそうなっているだけです。ここで話を止めてしまうと、新しくやりたいことは全部「手作業で埋める」ことになります。実際には、表計算ソフトへの転記、電話での確認、月末の手集計という形で、すでに人が埋めています。

一方で、触らないという条件は守ったまま進められる形があります。いまのシステムには記録の中心を任せたまま、外側に新しい入口や集計を足すやり方です。

外付けは、その場しのぎの回り道ではありません。入れ替えの時期が来ていないシステムに手を入れずに済むので、入れ替えの判断を先に迫られなくなります。入れ替えそのものの判断基準は 業務システムは何年で作り直すのか に分けて書いています。

外側に足したいと言われるのは、だいたいこの5つ

ご相談の内容は会社ごとに違って見えますが、並べてみると行き先は5つに収まります。

やりたいこといまのシステムで足りていないこと外側に足せるか
現場のスマートフォンやタブレットから入力したい画面が社内のパソコン専用で、現場では紙に書いて後から転記している足しやすい。外側で入力し、確定した分だけ渡す
取引先や会員が自分で見られる画面がほしい社内向けに作られていて、外部に見せる想定がない足しやすい。見せる項目だけを別に持つ
見たい切り口の集計を出したい帳票の形が決まっていて、担当者が毎月手で組み直している足しやすい。書き出したデータを外側で集計する
申請と承認の流れを画面にしたい申請という考え方がそもそも入っていない足しやすい。外側で完結させ、決まった結果だけを入れる
別の仕組みとデータをつなぎたいデータを出し入れする口が限られている、または分からない口があるかどうかで決まる。先に確認が必要

5つの共通点は、どれもいまのシステムが持っている記録の中心を書き換えていないことです。読むか、すでに確定したものを足すかのどちらかに収まっています。だから触らずに進められます。

逆に、単価の計算の仕方を変えたい、在庫を引く時点を変えたい、締めの処理を変えたいといった話は、記録の中心そのものの変更です。これは外側では成り立ちません。この線引きが、外付けで足せるかどうかの最初の分かれ目になります。

積み上げた木のブロックに、手でもう1つ置いているところ

足せるかどうかは、4つの質問で分かる

外付けが成り立つかどうかは、やりたいことの内容ではなく、いまのシステムからデータを出し入れできるかで決まります。確かめることは4つです。

  1. 定時にデータを書き出せるか。毎晩や毎時でファイルを自動で書き出す仕組みがあるか、それとも担当者が画面から手で出しているか。
  2. データを直接読み取ってよい契約になっているか。技術的に読めるかではなく、保守をしている会社との契約で認められているか。
  3. 外部とデータを受け渡す窓口(API)があるか。あれば書き込みまで任せられる場合があります。
  4. 書き出しの単位と時点はどうなっているか。1日1回か、そのたびか。前日までの確定分か、途中の数字も入るか。

この4つに答えられるのは、発注する側か、保守をしている会社だけです。開発会社の側は答えを持っていないので、見積もりを頼む前にここだけ先に押さえておくと、提案の前提がそろいます。回答に数週間かかることもあるので、早めに投げておくのがよいと思います。

4つとも「できない」という回答だったときに、画面の操作を自動でまねる方法に逃げるのはおすすめしません。画面の配置が少し変わるだけで止まり、止まったことに気づかないまま数字が古くなります。その場合は、担当者が決まった手順で書き出す運用を前提に組み、受け取ってからを自動にしたほうが落ち着きます。

中を直す・外に足す・入れ替えるの3つ

やりたいことが決まったあとの進め方は3つあります。どれが正しいということはなく、いまのシステムが置かれている状況で決まります。

進め方向いている状況気をつけること
中を直す(改修)作った会社が今も保守している。直す範囲が1つか2つの画面で収まる保守の契約で改修が頼めるかを先に確認する。直したあとの確認作業は、業務を知っている側でしかできない
外に足す(外付け)触れない。作った会社が対応していない。やりたいことが記録の中心の外側にある正とするデータを1か所に決める。入力する場所が2つになる形にしない
入れ替えるサポートの期限が来ている。制度の変更に追いつかない。直せる人が社内にも社外にもいない期限から逆算する。確認作業の期間を年度末に押し込まない

外に足すという選び方は、この3つの真ん中にあります。全部入れ替えるには大きすぎるけれど、中を触ることは許されない。その場面で現実的に進められるのがこの形です。

注意したいのは、外付けを3年、5年と重ねていくと、小さな仕組みが社内にいくつも並ぶことです。それぞれは小さくても、合わせると誰も全体を把握していない状態になります。足すときに「これはいつまで使うものか」を決めておくと、入れ替えの時期が来たときに整理しやすくなります。

正とするデータを1か所に決める

外付けでいちばん多いつまずきは、同じ数字が2か所にできることです。どちらも更新できる形にしてしまうと、違う数字が出たときにどちらを信じるかが決まりません。現場は結局、両方を見て電話で確認する運用に戻ります。

これを避けるために、項目ごとに次の3つを決めます。

  • その項目の正はどちらか。取引先の情報、単価、在庫の数量、担当者。項目ごとに決めます。ひとまとめにはできません。
  • どちらからどちらへ流すか。片方向にします。正の側から、見るだけの側へ流す形です。
  • 流れなかったときに誰が気づくか。連携が止まることは必ずあります。止まったときに画面のどこを見れば分かるか、誰に知らせるかを決めておきます。

両方向に流すのは最後の手段です。どうしても必要なときは、項目単位で向きを分けます(住所は外側から、単価は中から、のように)。同じ項目を両方から更新できる形にするのは、どの段階でも避けたほうがよいと考えています。

判定の置き場所も同じです。たとえばドローン操縦士協会のシステムでは、実技の時間が10時間に足りなければ修了にできない、要件を満たしていない講師では記録ができないという判定を、記録する側に持たせています。判定が記録の側にあるので、外側の画面は判定をやり直さずに、そのまま表示するだけで済みます。判定を外側にも書いてしまうと、制度が変わったときに直す場所が2か所になります。

相談の前に自社でそろえておく6ステップ

見積もりを取る前にこの6つがそろっていると、提案の前提が各社でそろい、話が早く進みます。どれも新しく調べ直すものではなく、すでに社内にあるものです。

  1. いまのシステムの名前、入れた年、いま保守しているのが誰かを1枚に書く。契約書が見つからない場合は、請求書の宛先から追えます。
  2. やりたいことを「誰が、いつ、何を見るのか・入れるのか」の形で書く。機能の名前ではなく、人と場面で書きます。
  3. そのやりたいことを、いまは何で埋めているかを書く。転記、手集計、電話での確認。ここが、足したあとに減る作業になります。
  4. 保守をしている会社に、前の章の4つの質問を投げて回答をもらう。回答が待ちになるので、ここを最初に出します。
  5. 外側に出してよいデータと、出せないデータを決める。個人情報と取引条件は、社内の規程で判断が分かれます。
  6. 期限と、その期限になる理由を書く。「年度内」ではなく「総会が6月だから5月中に数字が出る状態にしたい」のように理由まで書きます。

1から3と、5、6は社内にしか答えがありません。4だけが社外からの回答待ちです。この順番で動くと、待ち時間と社内の作業が重なるので、全体が短くなります。

自社で埋めるときの項目は ヒアリングシート に7項目でまとめてあります。手元で先に埋めておいていただけると、そのまま相談に使えます。

pegのやり方

pegは、機能の一覧を比べるところからは始めません。いまの業務をお聞きして、どこを触らずに残すかを先に決めます。

日本眼科医会の会員管理システムでは、大手ベンダーから前のシステムと同じ規模の刷新提案が出ていた状態からご相談をいただきました。機能の比較からは入らず、事務局の業務をお聞きするところから始めて、必要な範囲を先に決めています。そのうえで試作の画面で見え方と操作の流れを確かめ、固まってから中身の開発に入りました。期間は、他社の提案が実装9か月とテスト3か月、pegは実装5か月とテスト2か月の7か月です。差が出たのは作業の速さではなく、作るものを決める順番です。

外付けの形も担当しています。大手物流企業では、すでに動いているミドルウェアに外付けのアプリを足す案件を担当しています。大手製造業の基幹システムの入れ替えにも関わっています。

進め方について、ご相談の前にお伝えしていることがあります。

  • プログラム、設計資料、管理者の権限は納品物として契約に書きます。あとから別の会社に引き継げる状態で納めます
  • お支払いは着手・画面の確定・納品の段階に分けます
  • どの案件も必ず2名以上で担当し、引き継ぎの資料を常に最新にしています
  • 納品後3か月の無償での不具合対応を契約に書きます
  • 一般的な技術と、確立した型で作ります。未知の技術が必要な案件はお引き受けしません
  • データの整理や確認作業は、業務をご存じの側に担っていただきます。そのぶん人の手間が減ります。範囲と予算が合わないときは、追加のご相談か、辞退をお伝えします

費用の決まり方は 業務システムの開発費用はいくらかかるのか に分けて書いています。手元の資料を入れて概算を出す形もご用意しています。

よくあるご質問

基幹システムに触らずに外側へ足す形は、その場しのぎになりませんか

記録の中心を書き換えない範囲であれば、その場しのぎではなく通常の作り方のひとつです。注意が必要なのは、記録の中心そのものを変えたいのに外側で代用しようとする場合です。たとえば在庫を引く時点を変えたい、締めの計算を変えたいという話は、外側では成り立ちません。この線引きを最初に確かめます。

保守をしている会社に相談したら断られました。どう進めればよいですか

断られたのが「改修」なら、次に確かめるのはデータの読み取りと書き出しです。改修は契約の範囲外でも、決まった形でのデータの書き出しは応じてもらえることがあります。あわせて、契約の更新時期と、いまの契約で何が頼めるのかを書面で確かめておくと、次の判断がしやすくなります。

手作業でのファイルの書き出ししかできない場合でも作れますか

作れます。担当者が決まった手順で書き出し、受け取ってからを自動にする形にします。この場合は、書き出しを忘れたときに古い数字が表示されることになるので、画面に「いつ時点のデータか」を必ず出します。

外付けにしたあと、いまのシステムを入れ替えるときは作り直しになりますか

データの受け渡し部分は作り直しになりますが、外側で作った画面や集計は残せる場合が多いです。残しやすくするために、受け渡しの部分だけを分けて作り、入れ替えのときはそこだけを差し替える形にしておきます。契約に設計資料を納品物として書いておく理由のひとつもここにあります。

外側にデータを置くことになりますが、個人情報の扱いは問題ありませんか

置く場所と、誰が触れるかを契約で決めておく必要があります。委託先の監督は委託した側に残るため、確認する項目を 会員名簿を外部のシステム会社に渡して大丈夫か に7項目でまとめています。なお、pegは法律事務所ではありません。最終の確認は、顧問の弁護士と個人情報保護委員会のガイドラインでお願いしています。

まずは話すところから

社内に分かる人がいない状態でも、手元にある材料から整理できます。何から話せばよいか決まっていなくてもかまいません。ご相談は無料です。