協会・団体の会費を、会費規程どおりに日割り・月割りで計算する|途中入会・休会・退会をシステムに落とす
年会費を扱う事務局で、毎年決まって手が止まるのが年度の途中です。4月に入会した会員と、1月に入会した会員から、同じ額をいただくわけにはいきません。かといって会費規程を開くと、そこに「日割り」とは書かれていないことのほうが多く、別表の金額を見ながら事務局が電卓で確かめている、という状態になりがちです。
この記事は、会費の按分をシステムに任せたいときに、まず何を確かめればよいかをまとめたものです。実在する4つの団体の会費規程・会員規程を読み、そこに書かれている決まりが、データの持ち方と処理のどこに当たるのかを並べました。
会費の計算は、正しさの基準が社内にしかない処理です。正解は会計のルールでも業界の慣習でもなく、その団体が総会で決めた規程の文そのものです。だから作りはじめる前に読むべきものは、他社のシステムの画面ではなく、自分たちの会費規程になります。
年度の途中で起きる、5つのつまずき
会費そのものの計算は、年度の初めに全員へ同じ額を請求するだけなら表計算で足ります。手間になるのは、年度の途中で会員の状態が動いたときです。相談をいただく内容は、だいたい次の5つに集まります。
- 年度の途中で入会した人の会費を、何か月分として請求するのか。入会を申し込んだ月か、承認された月か、会費が引き落とされた月か、どこを起点にするのかが人によって違う
- 休会している会員に請求書を出してしまった、あるいは復会した会員に出しそびれた
- 退会した人に、未納のまま残っている分がある。督促を続けてよいのか、取りやめてよいのかが決まっていない
- 会員の区分が年度の途中で変わった。すでに納めてもらった額をどう差し引くのかが、人によって答えが違う
- 会費の額が、人ではなく施設や会員数に応じて決まる。基準をいつ時点で見るのかが決まっていない
5つとも、計算が難しいのではありません。どの日付を基準にするかが決まっていないというだけです。そして、それはたいてい会費規程にすでに書かれています。

規程には「日割り」と書かれていないことが多い
公開されている団体の会費規程・会員規程を読むと、年度の途中の扱いは、日数ではなく月数や時期の区切りで決められていることがほとんどです。実際に公開されている4つの規程を並べます。いずれも各団体がウェブで公開しているものです。
| 規程 | 年度途中の扱いとして書かれていること |
|---|---|
| 全国老人保健施設協会 会費規程 | 会費算定の基準日は当該年度の4月1日現在(第4条)。別表の「入会時期による会費の免除」で、10月1日以降に入会した者は会費の2分の1を免除。納期は原則として毎年4月12日(第5条) |
| 日本人材派遣協会九州地域協議会 会費規程 | 事業年度の途中に入会した会員の会費は、入会承認月以降に支払う(第4条)。別表の補足に、年会費額を12で除し、入会月から事業年度末までの月数を乗じ、十の位を切り捨てると算出方法が書かれている |
| 日本磁気学会 会員規程 | 会員資格は理事会が入会を承認した日に始まる(第6条)。会費は毎年度分(4月から翌年3月まで)を新年度の始まる前月末までに納入(第11条)。年度途中入会の按分の定めはなく、初年度は入会金と年会費を納入する(第10条) |
| 日本臨床腫瘍学会 休会規程 | 休会期間中は会費を免除(第2条)。休会の期間は原則として3年、延長を含めて合計5年を上限(第4条)。休会期間終了後1か月以内に延長手続きがなければ、期間満了日に復会したものとみなす(第5条) |
4つを並べると、日数で割っているものは1つもありません。月数で割るもの、時期で2分の1にするもの、按分そのものを置かないものに分かれます。つまり、システムの側で気を利かせて日割りにしてしまうと、規程と合わない請求額が出ます。按分の式は設計で決めるものではなく、規程から写すものだということです。
按分の定めが規程に見当たらない場合もあります。そのときは「書いていないから適当に決める」のではなく、実際に事務局が毎年どう処理しているかを確かめて、規程の改定か、運用の申し合わせとして文書に残してからシステムに入れます。システムに先に入れてしまうと、そのときの担当者の判断が、誰も根拠を説明できない計算式として残り続けます。
規程の一文を、システムの仕様に置き換える
規程の文は、読み替えるとそのままデータの持ち方と処理の指示になります。上の4つから、よく出てくる書き方を取り出して並べます。
| 規程に書かれていること | システムでの受け止め方 |
|---|---|
| 会員資格は、理事会が入会を承認した日に始まる | 申込日とは別に「資格開始日」の項目を持つ。按分の起算はこちらを使う。承認が遅れた月の扱いが変わるので、2つを同じ項目にまとめない |
| 年会費額を12で除し、入会月から年度末までの月数を乗じる | 端数処理の位と方向まで仕様に書く。上の規程では十の位を切り捨てと決まっている。四捨五入にすると、別表の金額と1件ずつずれる |
| 別表に、入会月ごとの金額が載っている | 計算式を実装したあと、別表の全月を突き合わせる試験をする。別表が正で、計算式はその再現。合わない月があれば式のほうを直す |
| 10月1日以降に入会した者は会費の2分の1を免除 | 月数按分ではなく、日付で2つに分かれる区分。按分の方式そのものが団体ごとに違うので、方式を選べる形にしておく |
| 会費算定の基準日は当該年度の4月1日現在 | 会費の額が会員数・施設数・定員などで決まる場合、その数値を基準日時点の値として記録する。あとから数が変わっても、その年度の請求額は動かさない |
| 年度の途中で区分が変わった場合、既に納めた額を差し引いた残額を納付する | 会費を「年度あたり1本の請求」ではなく、年度の中で複数の請求と入金を積み上げる形で持つ。差額請求が1行として残るようにする |
| 既納の会費は、いかなる理由があっても返還しない | 返金の処理を作らない、という判断ができる。作らないことを決めるのも仕様。あとで例外が出たときに、手で処理する前提だと分かっていればよい |
この表の作り方そのものが、会費まわりの要件定義の進め方になります。左に規程の条文、右にシステムでの受け止め方。左が埋まらない行は、まだシステムにしてはいけない行です。
休会は「会員のまま、請求しない」状態として持つ
休会は、退会と並べて扱うと必ず破綻します。退会した人は会員ではなくなりますが、休会した人は会員のままで、会費の請求だけが止まります。規程の書き方も、そのとおりになっています。
- 休会できる理由が限定されていることがある。ある学会の会員規程は、国内在住の会員が満1か年以上国外に滞在する場合だけを認め、これ以外の理由による休会は認めないと明記している
- 休会には承認が要る。理事会の承認を経て休会となる、と定めている規程が多い
- 休会期間中は会費を免除する。ただし会員としての権利を行使できない、と権利の停止まで書かれていることがある
- 休会の期間に上限がある。原則3年、延長を含めて合計5年まで、といった形
- 期間が終わったら復会届を出して会費を納める。手続きがないまま期間が過ぎると、満了日に復会したものとみなす、と自動で戻る定めを置いているものもある
ここから、持つべき項目が決まります。休会は会員の状態として1件ずつ履歴で持ち、開始日・終了予定日・理由・承認日を記録します。会費の年次処理は、その年度に請求の対象かどうかを、名簿の現在の状態ではなくその年度の基準日時点の状態で判定します。そして期間の上限は、1回の休会の長さではなく、延長を足した合計で数えます。合計で数えると決まっているなら、過去の休会をすべてさかのぼれる形で残しておかないと判定できません。
満了日に自動で復会したとみなす定めがある場合、その日を過ぎた会員は、誰も操作していなくても請求の対象に戻ります。日次の処理で状態を進めるのか、請求を出す時点で判定するのかを決めておかないと、事務局の画面に出ている状態と請求の結果が食い違います。
未納・退会・自動退会を、どこまで自動にするか
会費の未納は、督促を出して終わりではありません。規程によっては、未納の期間に応じて段階的に措置が決められています。ある学会の会員規程では、納入期限までに未納の場合に督促状を送り、年に数回の通知の際には自動退会の適用がある旨の警告文書を送ると定め、会費未納の措置として会誌の発送を停止すると書かれています。滞納が1年以上に及ぶときの自動退会については、理事会に内容を報告して承認を受けると定めています。
この書き方は、システムを作る側にとってはありがたい指示です。ここから次のことが読み取れます。
- 未納の状態は、日数ではなく「どの段階まで進んだか」で持つ。督促、警告、発送停止、自動退会の候補、といった段階を記録する
- 段階が進むきっかけは日付だが、最後の自動退会だけは理事会の承認が挟まる。つまりシステムが自動で会員資格を失わせてはいけない。候補の一覧を出すところまでが自動で、確定は人の操作にする
- 発送の停止は、会費の処理ではなく名簿の側に反映される。会費のシステムと送付先の管理が別々だと、ここでずれる
- 自動退会になった人は一定期間、再入会を認めないと定められていることがある。退会した人の記録を消してしまうと、この判定ができなくなる
4つ目は見落とされがちです。退会者を名簿から削除する作りにすると、再入会のときに同じ人を新規として登録してしまい、過去の履歴がたどれなくなります。退会は削除ではなく状態の変化として持つ、というのが会員管理の基本になります。
会員管理システムを作り直したときの進め方
pegは日本眼科医会の会員管理システムを作り直しました。長く使われてきたシステムの置き換えで、会員の状態と会費の扱いが、どちらも長年の運用の中で細かく分かれている状態からの出発でした。
このとき最初にやったのは、画面を描くことではなく、業務の聞き取りです。規程に書かれていることと、事務局が実際にやっていることの間には、必ず差があります。その差は、仕様書を書いてもらっても出てきません。出てくるのは、試作した画面を見ながら「この場合はどうなるんですか」と尋ねたときです。だからpegは試作画面で仕様を固め、裏側の作り込みに入る前に仕様を確定させる進め方をとりました。結果として、他社の見積もりが実装9か月とテスト3か月だったところを、実装5か月とテスト2か月の7か月で作り直しています。
同じ考え方は、ドローン操縦士協会の講習管理でも使っています。そちらでは、要件を満たさない講師では記録そのものを作れないようにしました。規程が決めていることを、注意書きではなくシステムの制約として持つ、という作りです。会費でいえば、休会中の会員に請求書を作れないようにする、承認されていない入会で按分を走らせない、といった形になります。
pegは、仕様書がない状態からでも、いまの会費規程と、いま事務局が使っている表計算の実物から始められます。社内にシステムに詳しい人がいなくてもかまいません。
作りはじめる前に決めておく6つのこと
会費まわりで開発会社に相談する前に、次の6つを文章で決めておくと、そのまま仕様になります。どれも、事務局の中だけで決められることです。
- 按分の方式。月割りか、時期による区分か、按分なしか。規程のどの条文に書いてあるかも書き添える
- 按分の起算日。申込日、承認日、資格開始日、入金日のどれを使うか
- 端数の処理。何の位を、切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれにするか
- 会費額の基準日。額が会員数や定員で決まる場合、いつ時点の値を使うか。年度の途中で数が変わったとき請求額を直すのか、直さないのか
- 休会の扱い。請求を止める条件、期間の上限の数え方、復会の手続きが要るか自動か
- 未納の段階。督促をいつ出すか、どこまでを自動にして、どこから人が決めるか
この6つが決まっていれば、会費の按分は難しい処理ではありません。逆に、ここが決まらないまま作ると、毎年3月と4月に事務局が電卓で検算する作業が、システムを入れたあとも残ります。
よくあるご質問
会費規程に、年度途中の入会についての定めがありません。どうすればよいですか。
いま事務局が実際にどう処理しているかを書き出すところから始めます。多くの場合、担当の方の頭の中に決まりがあります。それを文章にして、理事会や総会で規程の改定または申し合わせとして確認していただいてから、システムに入れます。順番を逆にすると、計算式の根拠を誰も説明できなくなります。
会費の計算だけを、いまの名簿システムに後から足すことはできますか。
できる場合もありますが、休会や退会の状態を名簿の側がどう持っているかによります。状態が履歴で残っていれば足しやすく、現在の状態だけを上書きして持っている作りだと、過去の年度の請求を再現できません。まず名簿の持ち方を確かめるところからになります。
端数処理まで仕様に書く必要がありますか。
書いてください。会費の按分では、端数の位と方向が違うだけで、会員1人ごとに金額がずれます。別表に月ごとの金額が載っている規程であれば、その別表と1行ずつ突き合わせる試験をしておくと、取り違えがその場で分かります。
休会の申請を会員自身がWebから出せるようにしたいのですが。
申請の受付までを会員側にして、承認は事務局の操作にするのが安全です。多くの規程で休会には理事会などの承認が必要とされているため、申請がそのまま休会として反映されると、規程と合わない状態が名簿に残ります。
どのくらいの規模から、システムにしたほうがよいですか。
人数よりも、年度の途中で状態が動く件数で考えるほうが当たります。会員数が多くても、全員が4月から3月まで同じ区分なら表計算で足ります。逆に人数が少なくても、途中入会・休会・区分変更・施設の異動が毎月あるなら、表計算では履歴が追えなくなります。
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