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社内システムは電子帳簿保存法でどこまで直すか|直さなくてよい部分の見分け方

電子帳簿保存法への対応を調べ始めると、自社の基幹システムや販売管理システムを作り直さなければいけないように見えてきます。検索の画面を作る、履歴を残す、タイムスタンプを入れる。見積を取ると、どれもそれなりの規模になります。

ところが国税庁の資料を順番に読んでいくと、制度が「しなければならない」と決めている範囲は、思っているよりずっと狭いことが分かります。システムを直さずに、社内の決めごとと書類の置き方だけで通る部分があり、そこは制度の側が明文で認めています。

この記事では、制度の文章を「システムの仕様としてどう受け止めるか」という見方で読み直し、いま持っているシステムのどこを直せば足りるのかを切り分けます。制度そのものの逐条解説はしません。判断の順番だけを扱います。

直さなくてよい区分を、先に外す

電子帳簿保存法は、ひとつの大きな義務ではありません。国税庁が「国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等の制度の概要」で説明しているとおり、制度は条文の項ごとに分かれています。そして、項ごとに書き方が違います。

帳簿を電子データで備え付けて保存する区分(第1項)と、紙で受け取った書類を読み取って保存する区分(スキャナ保存・第3項)は、どちらも紙の保存に「代えることができることとされています」という書き方です。一方、電子取引の区分(第4項)だけは「保存しなければならないこととされています」と書かれています。

この書き分けが、そのまま改修の優先順位になります。

制度が決めていることシステムでの受け止め方
帳簿の電磁的記録による保存(第1項)は、紙の保存に代えることができるいまのシステムが要件を満たさないなら、帳簿は紙で出して保存しておけばよい。システムを直す理由にはならない
スキャナ保存(第3項)は、紙の書類の保存に代えることができる紙をそのまま保管し続ける運用を選べる。スキャナ保存のための読み取りや付加情報の機能は、必要になってから足せばよい
電子取引の取引情報に係る電磁的記録は、保存しなければならないここだけが「やらない」という選択肢を持たない。改修の検討はこの区分に絞る
「優良帳簿」は、あらかじめ適用届出書を所轄税務署長等に提出したうえで、過少申告加算税の軽減措置の適用を受けることができる訂正・削除の履歴を残す機能は、この軽減措置を取りに行くかどうかの判断。義務ではないので、見積の最初の一行には入らない

社内システムの改修見積が大きくなるのは、たいてい3つの区分を一度に満たそうとしているからです。まず帳簿とスキャナ保存を外して、電子取引のデータ保存だけを残す。これで検討する範囲がかなり小さくなります。

「archive」と書かれた白い箱が、両側の棚にずらりと並んでいる様子

真実性の確保は、4つのうち1つでよい

電子取引のデータ保存には、真実性を確保するための措置が求められます。国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)の問18には、「次のいずれかの措置を行う」として4つが並んでいます。

制度が決めていること(原文)システムでの受け止め方
一 タイムスタンプが付された後の授受相手から届いた時点で付いているかどうかは、こちらでは決められない。全件をこれで満たすことはできない
二 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す付与の仕組みと、受領から付与までの時間を測る仕組みが要る。社内システムの改修になる
三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行ういまのシステムが上書き保存なら、履歴テーブルを足す改修になる。置き場所を書き換えられない形にするという選び方もある
四 訂正削除の防止に関する事務処理規程を定め、備付け、運用するシステムの改修は要らない。文書と運用で満たす

「いずれか」と書かれているので、4つ全部をそろえる必要はありません。四の事務処理規程だけで真実性の要件を満たすことができ、国税庁はそのための規程のサンプルも公表しています。つまり、真実性のためにシステムを直さなければならない、という前提自体が成り立ちません。

見積を読むときは、「タイムスタンプ機能」「変更履歴機能」が真実性のどの選択肢に対応しているかを確かめてください。四を選べば要らない機能が、二と三の前提で積まれていることがあります。

検索の機能は、作らずに済むことがある

もう一つの柱が、可視性の確保です。ここで出てくるのが検索機能で、国税庁の一問一答【電子取引関係】には、検索の条件として設定できるようにする記録項目として「取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先」が示されています。そのうえで、日付または金額については範囲を指定して条件を設定できること、そして二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できることが挙げられています。

この3つを素直に読むと、検索画面の開発になります。ところが同じ一問一答は、その先で要件が外れる場合を続けて書いています。

制度が決めていることシステムでの受け止め方
日付・金額・取引先を検索の条件として設定できることこの3項目がデータとして別々に取り出せる形になっているかが分かれ目。1つの備考欄に文章で入っていると、ここで引っかかる
日付または金額は、範囲を指定して条件を設定できること一覧の絞り込みに期間と金額の範囲を持たせる。開発としてはここが一番重い
二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること複数条件のAND検索。同じく開発が要る
ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は、範囲を指定して条件を設定できる機能と、項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保は不要重い2つが外れる。残るのは日付・金額・取引先で引けることだけ。表計算ソフトの索引簿でも成り立つ
判定期間に係る基準期間(通常は2年前)の売上高が5,000万円以下で、ダウンロードの求めに応じることができるようにしている事業者は、全ての検索機能の確保の要件が不要検索の作りこみは一切不要。データを決めた場所に置き、求められたときに渡せる状態にしておくだけになる

売上高の基準は、個人事業者なら前々年、法人なら前々事業年度で判定すると書かれています。令和5年度の税制改正より前の取引については、この基準が1,000万円以下とされています。自社がどちらに当たるかを先に確かめておくと、検索画面を作るかどうかの判断がその場でつきます。

さらに国税庁は、所轄税務署長が相当の理由があると認め、税務調査等の際にデータと整然とした形式で出力した書面を提示・提出できるようにしている場合の猶予措置も示しています。この場合もデータそのものの保存は必要で、書面で代えることは認められていません。「紙に出しているから大丈夫」という整理にはならない、ということです。

それでも社内システムを直すことになるのは、この3か所

ここまでで、真実性は規程で満たせて、検索は条件によっては作らなくてよいことが分かりました。では、どういうときに社内システムの改修が避けられなくなるのか。私たちが相談をいただいてきた範囲では、だいたい次の3つです。

  • 日付・金額・取引先が、1つの項目にまとめて入っている。 受発注や請求の記録が、備考欄やタイトル欄に文章で入っていると、3項目を条件にできません。項目を分ける改修は、検索機能を作るよりも先に必要になります
  • データを上書きで持っている。 訂正や取消があったとき、同じ行を書き換えて終わりにしている作りだと、真実性の三を選べません。四の規程で満たすことはできますが、「あとから何がどう変わったのか説明できない」という別の問題は残ります
  • 受け取ったファイルが、業務ごとに別の場所に散っている。 メールの添付、取引先のサイトからの取得、クラウドサービスの画面。置き場所が担当者ごとに違うと、保存場所を1つに決めるという最初の一歩が踏めません

3つのうち最初の2つは、どちらもデータの持ち方の問題です。制度対応のためだけに直すなら気が重い話ですが、実際には制度と関係なく業務で困っている部分とほぼ重なります。

pegがドローン操縦士協会の講習・実技の管理システムを作ったときも、芯になったのは記録の持ち方でした。実技の時間が要件に届いているかを一覧で確かめられるようにし、要件を満たさない講師では記録そのものができない形にしました。日本眼科医会の会員管理システムでは、以前のシステムに改姓を扱う仕組みがなく事務局の手作業になっていた部分を自動化し、はがきなど関連する帳票にも姓の変更が連動するようにしています。どちらも「あとからたどれる形で持つ」という同じ考え方です。制度対応で求められているのも、結局そこです。

判断する順番

見積を取る前に、社内でこの順に確かめてください。ここまで埋まっていれば、開発会社と話す範囲がかなり絞れます。

  1. 電子取引に当たるやりとりを書き出す。 メールに添付された請求書、取引先のサイトから落とす明細、クラウドサービス上でやりとりする注文。紙でも郵送でもないものを全部並べます
  2. 真実性を、規程で満たすか機能で満たすかを決める。 規程で足りるなら、システムの改修はここでは発生しません
  3. 検索の要件が、どこまで自社に当てはまるかを確かめる。 ダウンロードの求めに応じられるか。基準期間の売上高がどちらの側か。ここで全部不要になるなら、検索画面は作りません
  4. 残った項目について、いまのデータの持ち方を見る。 日付・金額・取引先が別々に取り出せるか。訂正の記録が残るか。ここで初めて改修の話になります
  5. 改修する範囲を、制度対応と業務改善に分けて書く。 制度のために必要な分と、業務のために足したい分を混ぜると、見積が膨らんだ理由が誰にも説明できなくなります

この5つは、開発会社に聞く前に社内だけで埋められます。埋めてから相談すると、提案の中身を比べられるようになります。pegでは、この整理そのものを相談の中でご一緒することもあります。

直さないと決めたときに、残しておくもの

システムを直さない判断をしたときは、そのかわりに決めごとを残す必要があります。国税庁の一問一答には、システムを作らない場合のやり方が具体的に書かれています。

  • データのファイル名に、日付・取引先名・金額を規則的に付ける方法
  • 取引先ごと、月ごとのフォルダに格納する方法
  • ファイル名に連番を付け、内容は索引簿で管理する方法
  • 表計算アプリで索引簿を作る方法

どれも、やっていることは「外から1件を名指しできる状態にする」ことです。システムで検索できるようにするのと、人が決めた規則で名指しできるようにするのとで、制度が求めている中身は変わりません。

ただし、この方式は決めごとが守られている限りでしか成り立ちません。担当者が増えたとき、年度が替わったとき、規則から外れたファイルが混ざり始めます。社内システムを直さないという判断は正しくても、「誰がどう決めごとを維持するか」はあわせて決めておいてください。ここが決まっていないと、2年後に手作業でやり直すことになります。

保存する場所についても、一問一答は保存場所にある電子計算機とサーバが通信回線で接続されている場合などには、クラウドサービスの利用や海外のサーバへの保存も認められるとしています。社内にサーバを置き直す必要がある、という前提も必ずしも成り立ちません。

よくあるご質問

帳簿システムを入れ替えないと、電子帳簿保存法に対応できませんか

帳簿を電子データで保存することは、紙の保存に代えることができる制度として定められています。いまのシステムが要件を満たさないのであれば、帳簿は紙で出力して保存するという選び方ができます。入れ替えが必要になるのは、過少申告加算税の軽減措置を取りに行く場合です。

タイムスタンプの仕組みは、必ず入れないといけませんか

いいえ。真実性を確保するための措置は「次のいずれかの措置を行う」と書かれており、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて備付け、運用する方法も選択肢に含まれています。この方法を選んだ場合、タイムスタンプの付与の仕組みは不要です。

検索の画面を作らないと、要件を満たせませんか

条件によって変わります。税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合、範囲を指定して条件を設定できる機能と、項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保は不要とされています。さらに判定期間に係る基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者については、全ての検索機能の確保の要件が不要とされています。まず自社がどちらに当たるかを確かめてください。

データを紙に印刷して保管していれば足りますか

いいえ。相当の理由があると認められる場合の猶予措置でも、データそのものの保存は必要とされており、電子データを出力した書面で代えることは認められていません。印刷した書面は、データとあわせて提示・提出できるようにしておくためのものです。

いまのシステムを直すか、別に小さな仕組みを足すか、どちらがよいですか

どこで引っかかっているかで変わります。日付・金額・取引先が1つの項目にまとめて入っているなら、元のシステムのデータの持ち方を直すほうが後が楽です。受け取ったファイルの置き場所が散っているだけなら、外側に受け取りと保管の仕組みを足して、いまのシステムには手を入れないほうが安く早く済みます。判断の材料は、上の「判断する順番」の4番目で出てきます。

社内にエンジニアがいませんが、どこから相談できますか

手元にある資料(やりとりの一覧、いまのシステムの画面、取引先からの通知)をそのままお持ちいただければ、そこから整理します。仕様書は要りません。企画書・仕様書・書きかけのメモなど、手元の資料を入れると、作るものの範囲と概算の見積がその場で出る見積シミュレーターも無料で使えます。

まずは話すところから

社内に分かる人がいない状態でも、手元にある材料から整理できます。何から話せばよいか決まっていなくてもかまいません。ご相談は無料です。